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前作『伝説を呼ぶ ブリブリ3分ポッキリ大作戦』に続いてムトウユージが監督を務めた「クレヨンしんちゃん」シリーズの1作。春日部市の市民がサンバを踊りながら、そっくりの人物に入れ替わってしまうという、ジャック・フィニィのSF小説「盗まれた街」を思わせる凝った侵略シチュエーションを、「クレヨンしんちゃん」ワールドの中で描いた作品。ところが「サンバ」「人間の入れ替わり」「秘密組織」「コンニャクローン計画」といった、好奇心をそそる要素がストーリー進行の中でうまく絡み合わず、きわめて散漫な印象を受ける作品となってしまった。事件が起こる前半の侵略描写の積み重ねに工夫がなく冗漫で、これが全体のバランスを悪くしており、敵の正体が判明するくだりまで、上映時間が非常に長く感じられる。またサンバの躍動感をアニメで表現することも無理があったようで、クライマックスでサンバから音頭へと転調するあたりにカタルシスが感じられないのが致命的な欠点だ。(斉藤守彦)