1973年ごろ、左本人による“Hey You! What's Your Name?”という、まぁ決して上品ではない英語の呼びかけフレーズがギャグとして流行。そのフレーズを織り込んでミッキー・カーチスがプロデュースし、ひとつの楽曲に仕立てたのがこのCDのタイトル・チューンで、大きなヒットにはならなかったが、今もこうして語り継がれ、再発され続けている。コメディアンによる、笑わしにかからない曲としては、二郎さん(坂上二郎)の「学校の先生」に並ぶ傑作である。上記のようないきさつで作られた曲ならば、それこそ適当なコミック・ソングとして作られ、それなりに売れ、いつのまにか忘れられたとしても、それで十分だったのだろうが、この楽曲のもつ恐るべきパワーは、時代の狭間に埋もれることを許さなかった。分厚い、ファンキーな音。弾けまくる左のシャウト。さすがはマチャアキ版『西遊記』シーズン2で猪八戒を演じた男である。終盤、JBもビックリの“What's,What's,What's,”が聴けるが、これはおそらく編集によって生み出されたもので、プロデュースの勝利だろう。“こんな、ひどい時代”なのは、この曲が発売された頃も今も変わらないし、いつの時代も人生は厳しい。左は、人生の真実について語っているのだ(これは楽曲だが、歌ではない)。ちょっと聴くと、何かわけのわからないことを言ってるように聴こえるかもしれないが、いつかはその意味がわかるはずだ。オレも「若さでGO!」と言えなくなってはじめて、この曲のほんとうの価値がわかってきたような気がする。カップリングの「東京っていい街だな」もまた、分厚いフィリー・サウンドをバックに、頓珍漢な男の美学をキメる左の語りが堪能できる傑作。加えて「とん平の酒びたり人生」「続・東京っていい街だな」も収録。ダウンロード販売もあり。