ヴァイ・レッドの“バード・コール”というパーカーのトリビュートをした素晴らしい女性アルト・サック奏者のアルバムに出会いうれしくなっていた矢先、我が国の女性パーカニスト矢野沙織のアルバムを聴く機会を得た。もちろん彼女が報道ステーションのテーマ曲を演じた話題の若手アルト奏者であることは知っていたが、アルバムをちゃんと聴いたことがなかった。このアルバムGroovin’High は言わずと知れたビ・バップの巨匠トランぺッター、ディジィー・ガレスピーのバップの名曲にちなんだもの。ヴァイ・レッド同様パーカーへの思いが伝わるトリビュート・アルバムになっているのだが、メンバーがこれまたすごい。ジェームス・ムーディー、ジミー・ヒース、スライド・ハンプトンといったバップの生き証人と名トランペッター、ランディ・ブレッカーなどがラインナップを務める。弱冠20歳でこんな経験ができること自体ありえないことだが、臆することなく堂々と演じているではないか。これはもはや、世界のプレミアムリーグに所属する日本人の若手サッカー選手やメジャー挑戦をしてしっかりとした成績を残すプロ野球選手といった我が国のアスリート同様、ワールドワイドな活躍ができる日本人の若者が多数輩出する時代になったのであろう。 アルバム内容はというと、Speak Lowからいきなり飛ばし、Mantecaでは重厚なアンサンブルで魅せ、バラードMy Idealでは、じっくりと表現力を堪能できる。 Billie’s BounceやGroovin’Highなどのバップ・チューンはやはりスリリングだ。Over The Rainbow、There Will Never Be Another You そしてCorcovadoなどでは、パーカーというより西海岸のクールで繊細なサックスも披露し、矢野の多面的な持ち味も出している。それにしても、恐るべし早熟アルト・サックス少女だ。オジサンたちは興奮してしまうしかない。