変わった角度や視点に芸術性を見るジャン・リュック・ゴダールがサミュエル・フラー監督作品の中でもことのほか愛したのがカラフルなギャング映画『東京暗黒街・竹の家』と、この異色西部劇『四十挺の拳銃』です。どちらも相当に“はずしている”作品であることはたしかなのですが、前者の“はずしかた”には一種の洗練された面白さを感じ、本編の“はずしかた”には荒々しさと粗雑さを感じます。そして、本編のそれは時に“やりすぎ”とも思えてしまうのです。
例えばバーバラ・スタインウィック演じるヒロインとバリー・サリバン演じる冷静沈着なガンマンとの強引な惹かれあいかたにそうした“やりすぎ”さを感じます。これといった伏線も無くいきなりヒートアップしながら見つめあってしまうご両人ですが、そもそもこの二人がもともと知り合いだったかどうかも明らかにされません。またジョン・エリクソン扮する荒くれ者の弟がいよいよ暴れだし悪役としての迫力を増すと、それまで悪のヒロインとしてクールで強かったスタインウィックが急に弱々しくなってしまうあたりもいささか興ざめてしまいます。また、題名の由来でもあるスタインウィックお抱えの40人のガンマンもぞんざいに扱われいて、あまり本筋とは関係ないところが肩透かしをくらったかのようです。
がそこはフラー監督。ちゃんと荒々しさの中にも“面白さ”を盛り込んでいることも事実。ディーン・ジャガー(さすが名優です)演じる保安官の弱いのだか凶暴なのだかわからない屈折したキャラクターは目を引きますし、ところどころにフォークソングを入れ込んで独特の詩情を加えているあたり、フラー監督ならではのユニークな視点を感じます。
映像よし、ひねりよし。しかし、いささか荒削りでご都合主義的な部分が強調されすぎて、それが裏目に出てしまったように思える本作は総体的にみてフラー監督作品としては及第点の域にあると思うのです。