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1980年代の半ばから指揮活動から引退していたクーベリッックがまさに最後の力を振り絞るかのようにして行った伝説的コンサート。壮絶そのものでございました。許光俊氏もこの演奏のことをライナーノートで次のように激賞しております。『ラファエル・クーベリックがチェコ・フィルとともに演奏したサントリーホールでのコンサートは 私にもっとも強い印象を与えた音楽体験のひとつである。今でも あの時ホールでどのような音が鳴っていたかを まざまざと思い出すことができる。私にとってもっとも忘れられない音だ。私は さして期待もなかったけれど 出かけた。どれどれお手並み拝見とばかり 醒めた気持ちで席に着いたが そのとき わずか数分後には比類ない音楽に打ちのめされることになろうとは まるで予想もしていなかったのである。超満員の人いきれがするホールで演奏が始まるや 聴衆は完全に度肝を抜かれた。怒濤のような響きの奔流に人々はたじたじとなり 激しい感情表現に心を奪われた。リズムがふんばるところは地に足が生えたようにがっちりとふんばり 飛び跳ねるところでは踊り狂った。全編これ息詰まるようなエネルギーの噴出であり しかも見境のないおめでたい熱狂ではなく 音楽の各場面は的確鮮明にたくましい筆致で描き出された。吹き上げてくるような熱気から音楽の異常な強さが生まれているのだった。私はステージの横の席で 激越な渦を巻いて襲いかかってくる管弦楽の響きを ただただ呆然と聴いた。渾身などという言葉はずいぶん安っぽいものになってしまったが これこそが渾身の演奏と呼ばれるべきものだったのである。そして家に帰ってからも考えた。だが 音楽から与えられた感銘はあまりにも大きかった。芸術は罪深い。理性を抗い 麻痺させようとたくらむ。そういう危険な芸術の最高の例のひとつが この「わが祖国」なのである。』
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