幻のケヴィン・エアーズ在籍期編成による68年ミドル・アース公演ライヴ音源を収録した未発表発掘音源が登場! Hope For Happiness, Joy Of A Toy, Why Are We Sleeping? 等デビュー作収録曲をはじめ、後にケヴィン・エアーズのソロ作に収録される楽曲も含む内容。 エアーズ、マイク・ラトリッジそしてロバート・ワイアットのトリオによる奇跡の音源を収録したファン垂涎の一枚です!! 日本語帯・解説付き輸入盤
Hope for Happiness、We Did It Again、Why Are We Sleeping?および67年秋に収録されたA Certain Kind以外の7曲はファースト・アルバムには未収録。ジミ・ヘンドリクスとのアメリカ・ツアー中、68年9月6日にシアトル・センター・コロシアムでライヴ・レコーディングされたものが大半だ。すでにファーストの録音は終了しており、ツアー後、ケヴィン・エアーズはグループを抜けてしまうので、マイク・ラトリッジ、ロバート・ワイアットとのトリオ編成としてのライヴ演奏が聴ける貴重なものでもある。 それがなぜ発掘されたかと言えば、ここに本来の彼らの姿があったからに他ならないだろう。端的には“ジャズに毒されていない”ということではないか。ご存知のようにソフト・マシーンは歴史的には英国ジャズ・ロックの総本山的な扱いを受けてきた。しかし、もともとはピンク・フロイドらと共にロンドン・アンダーグラウンド・シーンの顔であった。そもそも創設者のデヴィッド・アレンがカンタベリー出身者を集めてバンドを始動させた頃は、ジャンル分け不可能な“どこにもない音楽”を目指していた。それが、ここでのサウンドにも聴くことができるのだ。それは、70年代後半のパンクとは直接の関係のないダダ・サウンドといっていい。ジミ・ヘンドリクスのギターの役割をラトリッジのオルガンが担っているといった単純比較はできない。しかし、キース・エマーソンのどこまでも音楽的なエンタテインメントとは違って、ここでのオルガンはあくまで破壊的な音の洪水をくりだしてくる電気的な装置でしかない。ワイアットのドラムスは原始的で容赦がない。ヴォーカルはお伽噺めいている。エアーズは相変わらずマイペースで独自の世界を掘りつづけている。それでいて、どこかしら巫山戯てるというか遊んでるというか、児戯っぽい茶目っけさ、ノンセンス詩人めいた高等遊戯の余白がひらひら閃いているような隙間があって、それが実にシャレてる。 ジャズのクールさやロックの生真面目さが引っ込んでクルクルと回転しているツーカイさが心地いいのだ。音楽の音はいい方が結構だが、ここでのレベルの低さは余り気にならない。音楽の質がそれ[音質]を求めないのだろう。それよりも、ここでの独楽のような無邪気な演奏に身を任せるほうがズッと気持ちいい。個人的には、ファーストの肝を成す部分は、ほぼ収められているし、それとも違う要素も十二分に収められた本作は、やはり愛しいものの一つだ。