アーウィン・ゴッフマン(1922-82)は、カナダ生まれの社会学者で、本書は『行為と演技』('59)に次いで書かれた2冊目の著作('61)。1955年から1年間、アメリカの聖エリザベス病院で行ったフィールドワークに基づいて書かれた。
全体は4部からなるが、主力は第1部と第3部に注がれている。第1部「全制的施設の特徴について」では、被収容者の生活を包括する程度が大きな施設を全制的施設(total institution)と呼び、そうした施設が被収容者-職員間で、いかなる儀礼的関係を作り上げるのかを概観する。次に、「精神障害者の精神的閲歴」では、本書の主題が「自己」になることを宣言し、全制的施設内における「自己」が、施設外の包括社会での「潜在的患者期」から「院内患者」となるまで、剥奪モデルで考察する。第3部「公共施設の裏面生活―精神病院における苦境の切り抜け方の研究」では、ある個人が特定組織に公認の活動に協調的に寄与する場合を「第一次的調整」としたとき、非公認の目的や手段を用いて暗黙の仮定を回避することを「第二次的調整」とし、全制的施設ではいかなる二次的調整が行われるのかを具体例に即して分析し、その結果、自己なるものは、特定組織からの対抗的距離により出現するものではないかと考察する。最後に、「医療モデルと精神障害者の病院収容―修繕業の多様性の範囲に関する覚え書き」では、こうした全制的施設をサービス業一般の中に再布置し、それが物を修繕するサービスと比べ、いかに特異な精神科医と患者との関係を強いるのかを論じ、最終的に、そのような緊張関係が、施設を求める包括社会の側に根拠があることを指摘している。
本分析は患者世界の側に立ち、職員の側の分析には深入りしていない。翻訳は一部に独特な訳語があり、一文が長い否定文などになると読みにくい部分も無きにしも非ず。ただルビを振って原語を示し、訳注的カッコで補って読みやすくする工夫も行っているので、それほど気になるまい。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ゴッフマンの社会学〈3〉アサイラム (1984年) -
カスタマーレビュー
星5つ中4つ
5つのうち4つ
1グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。