SFの巨匠として名高い著者であるが、平安時代を舞台に歴史の裏側を大胆に推理する三部作が衆力されている本書は、歴史小説として読み応えがある力作である。
第一話の表題作「遷都」は平安京への遷都を背景に藤原氏が権力を握っていく時代の雰囲気が見事に描かれている。
第二話の「応天炎上」では時代が下って藤原氏の権力が確立されており、それを更に強固にするために、応天門火災を契機に大伴氏の末裔である伴善男が政権から追放された事件の舞台裏を大胆に推理している。主人公が若き日の菅原道真というのも楽しい。
そして第三話の「糸遊（かげろう）」の舞台は藤原氏の権力が絶頂に達した藤原道長の時代まで下る。主人公は若き日の紫式部。清少納言と初めて対面する場面などが読み応えがある。
平安時代というと源氏物語の優美な世界を連想するが、実際は陰謀と暴力が渦巻く時代でもあったこともよくわかり、非常に面白い一冊であった。
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