この本は、ジャクリーン・ビセット主演の同名の映画の原作、です。映画の方は、ジョージ・シーガル、ジャン・ピエール・カッセル、ロバート・モーリー・・・とたくさんの味のある役者が出ている、おしゃれで恐怖の味のスパイスの効いたきれいで楽しいコメディです。
しかし、この、ナン＆アイヴァン・ライアンズという夫妻のライターによって書かれた原作は・・・これは、ニューヨーカーという雑誌がおしゃれですけれども、そういう都会的センスのいいとこ取り！という感じに出来上がっていて、映画よりもさらに、たいそう深い味わい、になっています・・・

まず、シェフたちが出てくるだけあって、超グルメです！それから、そういう一流のメニューの料理雑誌の編集者たちが出てくるので、ニューヨークのジャーナリズムの洗練・すごさを見せ付けてくれます。また、主人公のナターシャを中心にいろんな人間関係があり、それは保守的な人には理解されないかも知れないけれど、人間の気持ちを大事にしたそれぞれの興味深い人間関係、友情・愛情の交錯、になっています。また、料理を味わう、ということは性欲と似たところがありますが、そのようなセクシーさも、当然味わいの中に入っています。
そういった、人間の本性をちゃんと出しながら、ニューヨークのおしゃれなファッショナブルなうつくしさ、またヨーロッパ文化によって営々と築かれた食文化のレベルの高さ、また世界の名だたるシェフ、という卓越した人物たちの面白さ、そこに、殺人という狂気と、最後どうなるのか、という謎を追っていくスリルが加わって、すごくおしゃれな深みのあるエンタテイメントになっています。
ちなみに、真犯人は映画とは違っています。映画でこの小説の隅々まで描くのはかなり難しいことだったのかもしれませんが、映画はきれいだけど、ちょっと表面的描写におわり、この原作のすごみは、読んで味わうべき価値のある味、楽しみ、です。
1980年当時ですが、今はもうニューヨークは、こんなおしゃれや楽しみの余裕はないのでしょうか。
もっと、極端な状況になっているのでしょうか。あの頃ほどニューヨークをほめる人はいないなー、と感じます（自分が行ってないので、わからないのです・・・！）
本のカバーや挿絵のイラストがまた、とても洗練され、キュートで素敵です。おしゃれだけど殺人も起こりそうな感じなんです！当時この本を持っていて、アメリカ人の女性に何の本を読んでいるの！！？と、とてもうらやましそうにされました。

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料理長殿、ご用心 (1979年) －

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