スウィフトが奇天烈な人物だったにしても、どうしてこんなにおもしろく書けるのか。省けるところは省き、語りたいことだけを熱く語っているからか。
もとは月刊『図書』の連載(1965-69)。それぞれの章がワンテーマでまとまっているので、どの章からでも読み出せる。日本の世相についての風刺もところどころに顔を出す。
とくに3つの章――スウィフトの出生をめぐるミステリー、インチキ占星術師を小冊子やデマで周到にやりこめたパートリッジ事件、スウィフトが書いた匿名公開状がもととなったイギリス政府に対する悪銭拒否運動の顛末――は圧巻。読みながら、こちらも興奮する。
名著なのは間違いない。でも、復刊されることはなかった。禁止用語が頻出するせいかもしれない。
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スウィフト考 (1969年) (岩波新書) 新書 – 1969/6/20
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登録情報
- ASIN : B000J94CB0
- 発売日 : 1969/6/20
- Amazon 売れ筋ランキング: - 603,904位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 44,426位新書
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年4月5日に日本でレビュー済み
『スウィフト考』(中野好夫著、岩波新書。出版元品切れだが、amazonで入手可能)は、一風変わった本だ。
『ガリヴァー旅行記』の著者、ジョナサン・スウィフトは、悩みと不平・不満の塊とでもいうべき、徹底した厭世主義者であった。自分がこの世に生まれたことを嘆き悲しむあまり、自分の誕生日には喪服を着けて断食したという。スウィフトというのは複雑で、矛盾だらけで、多面的で、とても一筋縄ではいかない人物であるが、中野好夫の筆は、この特異な人間像を巧みに浮かび上がらせている。
私たちの周囲でもたまにスウィフト的な人を見かけるが、本物のスウィフトに比べると、いい人に見えてしまうから不思議だ。なぜかいつも不機嫌な人、しかめっ面をしている人には、恰好の教科書と言えよう。
『ガリヴァー旅行記』の著者、ジョナサン・スウィフトは、悩みと不平・不満の塊とでもいうべき、徹底した厭世主義者であった。自分がこの世に生まれたことを嘆き悲しむあまり、自分の誕生日には喪服を着けて断食したという。スウィフトというのは複雑で、矛盾だらけで、多面的で、とても一筋縄ではいかない人物であるが、中野好夫の筆は、この特異な人間像を巧みに浮かび上がらせている。
私たちの周囲でもたまにスウィフト的な人を見かけるが、本物のスウィフトに比べると、いい人に見えてしまうから不思議だ。なぜかいつも不機嫌な人、しかめっ面をしている人には、恰好の教科書と言えよう。
2012年10月12日に日本でレビュー済み
スウィフトという人は一体どういう人なんだろう。セックスがただの排泄作用になるとは。
しかし、スウィフトが実は有力者の隠し子だったという説は、信じがたい。昔は避妊ができなかったから、私生児が人口の何割かいた。そういう時代に有力者が女中に子供を産ませたからといって、それがスキャンダルになるほどのことだろうか。それは現代人の発想だろう。ただ、スウィフトが自分の出自を隠したがったことは確かだ。ということは、それは何か別の原因があったのだろう。たとえば、考えられるのは、本当の父が、母と血族だったということだ。ヨーロッパでは、血族結婚はローマ法王の許可が必要だった。イギリスでは当時すでに国教会だったから違うとしても、タブーだったのではないか。
しかし、スウィフトが実は有力者の隠し子だったという説は、信じがたい。昔は避妊ができなかったから、私生児が人口の何割かいた。そういう時代に有力者が女中に子供を産ませたからといって、それがスキャンダルになるほどのことだろうか。それは現代人の発想だろう。ただ、スウィフトが自分の出自を隠したがったことは確かだ。ということは、それは何か別の原因があったのだろう。たとえば、考えられるのは、本当の父が、母と血族だったということだ。ヨーロッパでは、血族結婚はローマ法王の許可が必要だった。イギリスでは当時すでに国教会だったから違うとしても、タブーだったのではないか。