20世紀を代表する法学者の一人であるケルゼンの名著である。
木鐸社の本書中においていくつかの論文が訳文で出版されており、
本書で第二次大戦で欧州出身でユダヤ系の出自ゆえに米国に亡命
したケルゼンの「正義とは何か」を拝読出来る。
純粋な理論の美しさ、厳しさ・・・しかし、その背後には、
「正義」のもとに民衆を圧迫してきた為政者たち、そして
科学の仮面をつけて自身の所説をまことしやかに述べ立てる
御用学者等への痛烈なイデオロギー批判が存在する。
米国におけるケルゼンの世評は、必ずしもはかばかしくなかった、
と仄聞するが、ケルゼンの著作を拝読すると、新約聖書に記される
神から与えられた永遠の正義などの amorous な言葉がことごとく
仮面剥奪され、その対象は聖書が説く論旨にも仮借なく及んでおり、
一般の読者には受け入れられなかったのだろう、と強く感じる。
ケルゼンの純粋な理論構成、イデオロギー批判の立場は、今後の歴史の
うねりの中で毀誉褒貶を繰り返しながら、繰り返し参照され続けるであろう
と思われる。
第二次大戦前はナチに逐われ、戦後は法実証主義というレッテルを貼られて、
時代の変遷の中で、左右の立場から批判されたケルゼンの現実は、図らずも
本書において その思想の屹立した一貫性を証明している、と評し得よう。
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正義とは何か (1975年) (ケルゼン選集〈3〉) 単行本
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