本書は、単純に料理の発展の様子を語ったものではありません。『栽培植物と農耕の起源』(岩波新書,1966)、『照葉樹林文化』(中公新書,1969)の著者ということで、栽培植物とそれに関わる文化を重視したものです。米、小麦、雑穀、豆、肉と魚、乳、果実と蔬菜という章題で、それぞれについて文化に密着した非常に詳細な考察がなされています。
料理とは単なる技術ではなく、それ自体が文化であり、その他の文化と密接に関係した文化複合を示すものでもあります。ですから、ただ単純にそれが他よりも優れているからというだけではなく、宗教儀礼や習俗といった生活と文化に深く根差したものとなるのは確かにその通りであろうと思います。本書ではさらに伝播と派生という観点からも、世界中の文化の検証と共に考察がなされており、料理だけではなく文化について学ぶためにもよい本であると思います。
本書において問題なのは、米の起源に関する記述でしょう。著者は米に関する文化が多様なインドを、当時はその起源と考えていました。しかし、渡部忠世氏の研究成果を受け、著者も『続・照葉樹林文化』(中公新書,1976)において、新たに東亜半月弧という概念を提起しております。このあたりの議論も非常に面白いものですので、興味があれば参照として下さい。
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料理の起源 (1972年) (NHKブックス) 単行本(ソフトカバー)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年11月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
料理というと幅広いですが、中尾先生の研究に係る料理ですね。面白いです。
2020年4月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
否定的なレビュータイトルを付けてしまいましたが、充実した内容の本です。ただし、料理と言ってもフランス料理、中華料理、日本料理といった意味ではなく、食物をヒトが摂取、保存できるように加工すると言う極めて根本的な分野のお話です。したがって、章立ても米、麦、雑穀、豆、肉・魚、乳、果物・野菜となっており、大部分は退屈です。
派手さはありませんが、我々が日々口にしている食品、特に植物由来の物が、長い人類の歴史の中で徐々に改良を重ねられて今日の姿になったと言う壮大なストーリーが本書を通して感じられます。ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」で述べられているような人類史の続編として、退屈さに打ち勝ちながら読めば、有意義な内容を多少は楽しむことができるかもしれません。(ただし、野生の植物が栽培されるようになった過程については本書の範囲外です。)
派手さはありませんが、我々が日々口にしている食品、特に植物由来の物が、長い人類の歴史の中で徐々に改良を重ねられて今日の姿になったと言う壮大なストーリーが本書を通して感じられます。ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」で述べられているような人類史の続編として、退屈さに打ち勝ちながら読めば、有意義な内容を多少は楽しむことができるかもしれません。(ただし、野生の植物が栽培されるようになった過程については本書の範囲外です。)
2013年10月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前半の穀物料理の分布は知らなかったことが多くて驚いたし興味がわきました。後半も豆、肉・魚、乳、果実・蔬菜と内容が豊富で読ませる内容です。
2012年7月11日に日本でレビュー済み
著者は栽培植物起源学の大家・中尾佐助。
名著「栽培植物と農耕の起源」の続編に当たる書で、加工・料理に関して書かれています。
中尾は魅力的な仮説を提唱するアイデアが豊富であり、本書にもそれは現れています。
例えば「5豆の料理」で出てくる有名な「納豆大三角形」と「味噌楕円」。
是非、多くの人に読んで欲しい本なのですが、残念ながら絶版です。
ただし、本書の内容は「中尾佐助著作集」に含まれていることでしょう。
と2012/7/11時点で書いたのですが、吉川弘文館から2012/10/15に出版されることになりました。
吉川弘文館偉い。
名著「栽培植物と農耕の起源」の続編に当たる書で、加工・料理に関して書かれています。
中尾は魅力的な仮説を提唱するアイデアが豊富であり、本書にもそれは現れています。
例えば「5豆の料理」で出てくる有名な「納豆大三角形」と「味噌楕円」。
是非、多くの人に読んで欲しい本なのですが、残念ながら絶版です。
ただし、本書の内容は「中尾佐助著作集」に含まれていることでしょう。
と2012/7/11時点で書いたのですが、吉川弘文館から2012/10/15に出版されることになりました。
吉川弘文館偉い。