このCDでは明るい日差しが似合う曲もあるが、やはり夕時を思わせる曲が素晴らしい。心が瞬時に自分の思い出の風景の中に還ってしまう。歌詞のないインストではあるが、タイトルが非常に的確で、曲から広がるイメージを狭めることもなく、曲と合わせると一篇の小説を読んだような味わいがある。アルバム収録曲に「夕方ループ」というのがあるが、黄昏でも夕暮れでもなく「夕方」。この言葉でないと表わせない、個人的で身近な思い出とリンクする雰囲気というものがある。fishing with johnはそれをよくわかっている。このアルバムは音楽でありつつ文学のようでもある。
私はfishing with johnを知った時から、全世界で公開されるような映画音楽を手掛けてもらいたいと夢想している。曲から浮かぶ情景は非常に日本的であるが、別の国の人が聴けばまた違う国の風景にもなるのではないか。ギタリスト版のマイケル・ナイマンになれる逸材だと思っている。