ディスク2に収録されているのが、旧作のサウンド・トラックですね。
実は以前に旧作のサントラはCD化されているのですが、今回はボーナス・トラック付きで「犬神家〜」の作品のファンの方にも価値の高いものでになったのではないでしょうか?
市川昆監督は大野雄二があまり気に入らなかったらしく、次作の「悪魔の手毬唄」では他の作曲家に音楽を依頼していました。そして今回のCDですが、ボーナス・トラックとして収録された「那須の金田一耕介」は金田一耕介のテーマ曲とも呼ぶべきものなのに、本編中で使用されているのはアルバムに収録されているのとは別バージョンなのです。この曲は冒頭の金田一の登場シーンと謎の復員服姿の男の調査に来た加藤武と石坂扮する金田一が、旅館で顔を合わせるシーンで二度使用されています(二度目は回転数を早くして、実際の演奏よりスピーディーなテンポになっています)。逆にテーマ曲のムービー・ヴァージョンとして追加収録されたものは、実際には没ヴァージョンでしょう。過去にリリースされたレコード、CDはいずれも映画公開前に製作された「イメージ・アルバム」ですが、テーマ曲に関してはイメージアルバムの方を編集して使用しているようです。
ボーナス・トラックの方ですが、本編で使用されなかった曲もあり、私の記憶では金田一が那須ホテルの窓から湖を眺めるシーン(「那須の金田一耕介」のトラックの後半部分)、仮面の佐清の登場シーンのSE、その直後、金田一の泊まる旅館に弁護士の古館がやって来るシーン、仮面の佐清が松子未亡人に正体を明かすシーンなどで使われていた曲が収録されていました。
「劇中で使用されている」音楽とアルバムの中に収録されている曲とが微妙に異なるのはどうかと思いますが、以前リリースされていたアルバムは、純粋に「犬神家〜」の音楽を楽しむにはチト問題ありだったのは事実です。サントラ・アルバムというより「犬神家〜」を題材にした大野雄二の作品集のような趣きで、それが今回のボーナス・トラックの収録によりサントラらしい性格が強調されたと思います。
今回のCD化で渇きを癒された方も(私の他に)いらっしゃるのではないでしょうか?こんなCDが出ただけでも、この作品をリメイクした価値はあったかも知れません。