木霊するように響く、生命力に溢れた声、反復するリズム、透んだ音。様々な音色が静かに満ち満ち、海のように安らぎをたたえ、やがて、たゆたうように穏やかで思慮深い、瞑想的サウンドスケープを描き出す。ヒシャム・バルーチャ(元ブラック・ダイス、ライトニング・ボルト)による奇跡の1stアルバム。数々の奇才異才を輩出してきたアメリカ東海岸のアート・シーン。ヒシャム・アキラ・バルーチャは、その中でも特に傑出した才能である。元々、日本で生まれ、日米の学校を行き来していたヒシャムは、1995年、ロードアイランドのアート・スクールの友人と激烈ポスト・コア・バンド、ライトニング・ボルトを結成。精力的に活動を続け、アンダーグラウンド・シーンで大きな注目を集めた。1997年、ヒシャムはライトニング・ボルトを脱退(ライトニング・ボルトは現在の2人組編成となる)し、程なくしてニュー・ヨークで新たなバンドを組む。変態突然変異集団、ブラック・ダイスである。以後、6年にわたりブラック・ダイスの一員として活動。2004年のアルバム『Creature Comforts』を最後にブラック・ダイスを離れたヒシャムは、自身の音楽活動の可能性をさらに広げていく。DFAから作品をリリースをしているPixeltan、EYEとのGatax、スコット・ヘレンやタイヨンダイ・ブラクストン(バトルズ)らとのZanzoと、いくつものプロジェクトを始動。United Bambooからリリースされたコンピレーション『They Keep Me Smiling』をコンパイルし、アニマル・コレクティヴ、ギャング・ギャング・ダンスなどに代表される新しいニュー・ヨーク・シーンを世界に紹介した。またもう一つの顔であるヴィジュアル・アーティストとしてもドローイングや写真などを中心に精力的に活動し、世界各地で個展を開催している。
このソフト・サークルは、そのヒシャムによるソロ・プロジェクトだ。ギター、ドラム、エレクトロニクス、パーカッションとあらゆる演奏を彼がひとりでこなし、スティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスのように東洋文化から影響を受けた音楽を生み出す。生命力に溢れた声、反復するパーカッションのリズム、ギターや民俗楽器による幽玄のサウンド、透き通るエレクトロクス。木霊するように響く様々な音色は静かに満ち行き、海のように安らぎをたたえ、やがて、たゆたうように穏やかで思慮深い、瞑想的サウンドスケープを描く。
タイヨンダイ・ブラクストンのジャパン・ツアーやヤマタカEYEの個展のゲストとして来日、ボアダムスやゆらゆら帝国の米国ツアーのサポートを務めるなど、これまで頻繁にライヴ活動を行ってきたヒシャム/ソフト・サークル。興味深いリリースが続くスコット・ヘレン主宰レーベル、イースタン・ディヴェロップメンツからリリースされる本作は、その待望のファースト・アルバムだ。