「快傑ハリマオ」は「週刊少年マガジン」1960年4月17日号から石森章太郎により連載されていました。当時の各少
年月刊誌では「鉄腕アトム」や「鉄人28号」のような暁天の綺羅星のような超ヒット作を抱えていましたが、少年週刊
誌には、まだ、決定打といえるヒット作は登場していませんでした。
そのような中にあって、突然、登場したのが「快傑ハリマオ」でした。
そして、「少年マガジン」巻頭のハリマオ特集では、同時にTV放映が決定し、しかもカラー放送であると告知されて
いました。
そのグラビア写真には、カラー刷りのハリマオ、ドンゴロスの松やタドン小僧等が掲載されていましたが、当時は、
ようやく白黒TVが普及し始めた頃であり、カラー放送は夢のまた夢でした。
また、雄大な主題歌も素晴らしく、特に二番で歌われる「空の果てに十字星 きらめく星のそのように」のフレーズで
は、気分は既にまだ見ぬ南海の空に飛んでいました。
主題歌は「第一部 魔の城」までは東京メール・クァルテットが歌っていましたが、「第二部 ソロ河の逆襲」からは三
橋美智也が歌っています。
番組が始まるとTVの前で大人も子供も一緒に主題歌を歌う光景はどこの家庭でも見られる古き良き時代でもありまし
た。
この主題歌やドラマ中で近藤圭子さんの唄う「南十字星の歌」の作曲は小川寛興氏の作曲ですが、月光仮面、七色仮
面、鉄腕アトム、豹の眼、隠密剣士等の戦後ドラマの殆どの主題歌を手掛けていますし、「快傑ハリマオ」の後続番組
「恐怖のミイラ」のBGMも作曲しています。
「快傑ハリマオ」のドラマ中で太郎少年やハリマオが使用する拳銃はホルスターから抜くまでは回転式のリボルバー
拳銃なのですが、発砲の瞬間は何とスライドアクションのオートマチック拳銃のバレルから火を噴き、打ち終わると
握っている拳銃が、また、リボルバー拳銃に戻っているという珍風景に当時はあきれ返ったものですが、改めてDVDで
確認すると全編共に発射シーンはこれの繰り返しです。
たぶん、発火するステージガンはオートマチックのみで、リボルバーのステージガンが無かったためと思われます
が、いくらお子様向けドラマといっても手抜きにも程があります。
当時の「少年マガジン」には、タドン小僧は靴墨を塗って撮影していたと書かれていましたが、奴隷船の甲板上では
靴墨を塗り忘れて顔が真っ白なのですが、他の場面では靴墨が真っ黒に塗られています。
第1回~第5回までは、カラー・フイルムによる撮影ですが、発色は当時のイーストマン・カラーの特色を彷彿とさ
せる色彩です。
第5回以降のスタート時には、「ハリマオとはマレー語で虎のことである」とのテロップが出ています。
毎回、様々な番組にところ構わず出演する牧冬吉には子供達から「また、こいつか!」と大ブーイングの嵐でした
が、この番組でソフト帽にサングラス姿のキャプテンK・Kを演ずる時だけは「かっこいい!」と評価されていました。
当時はプロレスが盛んな時代であったため、いつも外人レスラーにボコボコにされるトホホな吉村道明は子供達から
大ブーイングを浴びていましたが、これに並んで嫌われていたのが牧冬吉でした。
「快傑ハリマオ」の番組が始まる前から大人達がTVに群がっていましたが、童謡歌手の近藤圭子さんが出演していた
からです。
ドラマ内で「南十字星の歌」を歌うと大人達はウットリとして聴き入っていましたが、「豹の眼」の錦華役と同様、
近藤圭子さんの出演はお父さん、お兄さんへのサービスのためだったようです。
約50数年振りに、子供時代の血沸き肉躍る冒険活劇がもう一度見られるうえ、近藤圭子さんの歌まで聴くことが出来
る、まさに「一粒で二度おいしい」グリコのようなお宝DVDです。