"ブライアン・イーノ指揮による、EITSとISISが織り成すシンフォニー"というほとんどワケのの分からんハイパーな形容が為されていた、米マサチューセッツの4人組インストゥルメンタル・ロックバンドによるデビューフル。大きく見ればその音の形式は、美麗な旋律と荒々しい轟音を掛け合わせた、それほど珍しくないタイプのもの。しかし一方で、この4人が打ち鳴らす楽曲は、かかるステレオタイプな音像を打ち砕く壮麗な歓喜の瞬間を、随所で豪快に炸裂させていく。
ノスタルジックなクリアギターの旋律により幕を開け、ドシドシと踏み抜かれるバスドラの屈強なリズムの牽引によりバースト。春の嵐が吹き荒ぶ爆音の海上にて、中空を舞い踊るトレモロが拡散するオープニングトラック"Moksha"。澱みなき展開により分厚いウォール・オブ・ノイズが打ち立てられていくTr.5"Book IX"。Mogwaiの"My Father My King"をコンパクト化したような、轟音を呑み込む爆音/爆音を塗り替えていくフィードバックノイズが吹き荒れるTr.7"Brombie"。端々で牙を剥き出すヘヴィ・メタリックな音塊が、予想を裏切るようなセンセーショナルな瞬間を創出する様はかなりイイ。
ベストトラックはTr.2"Some Are White Light"
煌めき流れ去るギターテクスチャが、一気に旋風と化し上昇気流を形成、直後に噴出する壮麗なディストーション/ノイズのヴェールにより第一の歓喜的瞬間へ。さらにそこからMOGWAIの"Helicon 1"を思わせる全方位型の至福の爆音にて空間をマミレさせ、更にはスタジアム級のメジャー・リフが悶死したリスナーに掴みかかるラストが待ち構えている。
正直、アルバム中の所々(特に終盤部)ではノスタルジーの澱みに沈みすぎる嫌いはあるし、展開に鈍重さを感じさせる瞬間もままあるには在る。しかし、随所で創造されていく轟音部のカタルシスは、そうした点をも覆い隠してしまうほどに途轍もなく莫大。煌びやかなダイヤモンドダストが吹雪へ、吹雪が鋼鉄のブリザードへと化し空間を舐め尽くしていく様は、まさしく圧巻。絶望も希望も混沌も秩序も憂鬱も歓喜も暗黒も光明も、全てをかっさらい巻き上げ解き放つかのような轟音。主旋律に合わせ舞い踊り、美しくトグロを巻く轟音。あらゆる音が幾重にも折り重なりながら、巨大な螺旋を成して舞い踊る爆裂のシンフォニー。全方位から掴み掛かる怒涛の音鎖に悶絶しました。これも是非ライブが観て見たいバンドです。