CD6枚組、7時間38分。構成は、1.交響曲、2.協奏曲、3.ピアノ独奏曲、4.弦楽器やフルートなどのソナタ、5.室内楽曲、6.歌曲・オペラとなっている。演奏はカラヤン、ベルリン・フィル、フィルハーモニア管弦楽団、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団ほか。演奏・音質は、「安かろう、悪かろう」ということはなかったが、曲の収録方法として、一つの楽章や冒頭・終結部の抜粋が非常に多いのが残念だった。
やはりベートーヴェンといえば、演奏時間が比較的長い交響曲に有名な作品が多いことから、100曲収録する上でネックとなるのはある程度仕方ないと予想はしていたが、9つある交響曲の内、全楽章を聴けるものは一つもない。特に第9番で、徐々に盛り上がって来るはずの第4楽章が途中で分割され、かなり唐突な編集で繋ぎ合わされている部分は何度聴いても興醒めする。少なくとも代表作に関しては、曲数を減らして完全収録するか、せめて一つの楽章は最後まで収めて欲しかった。
また、交響曲に比べれば短めのピアノソナタでも、全楽章収録されているのは第8番「悲愴」のみ。それ以外の「月光」「ワルトシュタイン」「告別」「熱情」などはすべて1つの楽章からの抜粋となっている。CD6枚のうち1枚を歌曲・オペラに充てているが、ベートーヴェンの作品としてはさほど重視されないことが多く、「フィデリオ」からの8曲を含め、帳尻合わせの印象は拭えない。ここは割り切って、最後の1枚も交響曲やピアノなどに回す方法もあったと思う。販売戦略上、100曲収録にこだわったのかも知れないが、それならCDを10枚ほどに増やすか、曲数を厳選して全曲聴けるようにしたほうが良かった。
とはいえ、ベートーヴェンの曲で日頃耳にすることが多いメロディや有名なフレーズはだいたい網羅しており、音質のバラつきもそれほど大きくない。個々の演奏のクオリティも一定水準をクリアしている。色々な演奏家をすでに何枚も聴いている人が改めて購入するには少し物足りないかも知れないが、ベートーヴェンが好きな人がカタログ的に気軽に聴くには悪くないCDといえる。