健康的で、屈託なく進軍するブラームスだ。ライブなのに破綻もない。
「前向き系」の1番は勿論、本来「呻吟ウジウジ系」の4番でも同じ。
これはブラームスではない、などとは言わない。再現芸術の面白さは、そこにあるのだから。
しかし、この演奏は、現在跋扈する影の部分を全て監視カメラで映し出し、ナマ白い清潔そうなカラーで糊塗した現代文化のイカサマ性と妙にマッチする。
4番第1楽章の健康的なこと!! 音楽の溜めなどまるでない。そこに陰影がないのである。影深くして光輝くというような、そういう意味では輝かしさもほとんど感じさせないのだ。評者はこういう音楽演奏を「スーパーフラット」と言いたいが、呼吸感や遠近感、懐の深さがまるでないのである。この指揮者は音楽が好きなのであろうか?