白眉は「なんとなく夢を」のEPバージョン。70年代のサイケフォークや80年代のブリティッシュ・ネオサイケサウンドを彷彿とさせるリバーブ・エコーの目立つ繊細かつ芯のあるソリッドな音に、「神経衰弱」で朦朧とした坂口安吾みたいな白昼夢ソング...というのが第一印象。思うに80年代の欧米のインディーロックに直接影響を受けた人たちだと思うので(それだけじゃないのは言うまでもないが)、こういう音が自然と出てきてもおかしくない。音楽性の変化ではなく荒々しいガレージロックの伏流に流れていた音を原点回帰的に振り返った結果、滲み出てきたものかと思った。彼らとほぼ同世代の私は、8、90年代当時、こういうサウンドのインディーロックを輸入盤で聴きあさっていた。そういう私的体験から言えば目新しいサウンドじゃないし「ロック史にに残るサウンド」みたいに大袈裟にいうつもりはない。それならTheCureの方がよっぽど「偉大」だ(比較するだけすごいことだが)。でも汚ねえライブハウスで荒々しいガレージパンクを演奏していた人たちだ。本当は「ロックとは?」みたいなことどうでもいいと思っていただろうし、もっと私小説みたいな闇の中で彷徨うことをリアルに表現したかった人たちだと思っている。
彼らとも新宿や高円寺あたりのレコ屋ですれ違っていたかもしれないな。あ、灰野さんのライブで同席してたか?