この中に納められている一作品にイシュ・パテルという人の「パラダイス」という作品がある。
世界のアニメーションに私が関心を持つ前か後かは忘れたが、TVで紹介されているのを偶然に一瞬見た。ダイヤモンドを散りばめたような、映像だけでもシャンデリアの音が聞こえてきそうな、その宮殿の美しさに強く惹かれてしまった。
是非機会があったらきちんと見たいと思っていたのだが、一時期凝ったオフシアター通いでも結局見る機会は無かったように思う。上記の作品の名前が『パラダイス』であることを知ったのは『アニメの世界』(とんぼの本)であっただろうか?
冷めていたアニメへの関心が沸々と蘇る中、このDVDに納められているのを知った時には少し興奮した。
久しぶりに見たその煌びやかさは私の期待を裏切らなかった。しかもそれだけではなくて「パラダイス」にはストーリがあることも分かり、別な意味の感動も受けた。城の中の様子も、その白い鳥も間違いなく美しい。だが、同じくらい外の世界も美しい。そして...
何回か見てみると、前半での白い鳥の美しさよりも、黒いカラスの楽しげな羽ばたきの方が、不思議と気持ちのよい余韻として残るのは私だけだろうか?
本DVDにはこの作品以外にもパテルの魅力的な作品が入っている他、アレクセイエフによるピンスクリーンの技法を受け継いだ数少ない一人ドゥルーアンの『Mindscape』(『世界と日本のアニメーションベスト150』によれば『頭山』の山村浩二氏が影響を強く受けたらしい)など、貴重な作品も入っているし、他の作品も『世界アニメーション映画史』のカナダの頁で触れられているような有名どころばかりのようだ。
個人的には「パラダイス」だけでも買う価値がある気がするが、アートアニメーション、アニメーション史に関心のある人は必見の作品集のように思う。
それにしてもイシュ・パテルの作品はいい!