グリークの「抒情小曲集」というと、ギレリス、リヒテルといった巨匠の名演があるが、
それらとはまったく違った魅力を持った「歌心に満ちた名演奏」。
全体がピアノ曲というよりも、歌曲のように聞こえてくる。
この特徴は、エヴァ・ポブウォッカが、子供の頃から声楽家だった母親の伴奏をしてきたのと
無縁ではないだろうが、それだけではない。
どうしたらピアノを歌う楽器として鳴り響かせることができるかを緻密に考えて、
テクニカルにコントロールしている。それがこの連作曲集に合っている。
録音も、ピアノの豊かな響きを、瑞々しくすくい上げている。
ギレリスも、リヒテルの場合も(リヒテルの場合は2枚組だが、それでも)、演奏者が独自に選んだ「選集」。
これは「全曲集」なので、その点からも「抒情小曲集」のアルバムとして決定盤と言える。
CDには、演奏者についての解説と、短いが的確な各曲解説がついている。