ジャズに興味を持った方で男性ヴォーカリストまで範囲を広げる方はさほど多くありませんが、男女のヴォーカル
まで聴くと決めたらメル・トーメは外すことが出来ない存在です。今回ベツレヘム原盤の「アット・ザ・クレッシェンド」
をK2HDリマスタリングしたCDを入手しましたので、ヴァーヴ原盤の「スウィングズ・シューバート・アレイ」の24bit
リマスタリング盤と聴き比べてみました。
1.スウィングズ・シューバート・アレイ(2000発売、POCJ-9249)
スタジオ録音、ステレオ、24bit Format Bitstream Conversionデジタル・リマスタリング、24bit/96kHz
2.アット・ザ・クレッシェンド(2008発売、VICJ-61461)
ライヴ録音、モノラル、K2HDデジタル・リマスタリング、24bit/192kHz
両者共にマスターテープをハイビット/ハイサンプリングレートでデジタル・リマスタリングしていますので、
音質的には互角、しかしK2HDがマルチビットADCによるデジタル・マスタリングであるのに対し、Bitstream
Conversionは1ビットADCが使われているため幾分音質に違いがあるだろうと思っていました。
「スウィングズ・シューバート・アレイ」はステレオ盤ですから、ヴォーカルやバックバンドの音の定位が
しっかり確認できます。音のバランスも良く、音場の広がりや奥行きを十分感じ取ることが出来ました。
メル・トーメの声も伸びており、繊細なニュアンスも聴き取れます。良いCDです。
これに対し「アット・ザ・クレッシェンド」はモノラル盤ですから、センターからしか音が聞こえません。
つまり原理的に音場の広がりは得られないため、楽器がどこに定位しているかは分かりません。
また多くのモノラル盤は音が融け合ったように聞こえることが多く、各楽器の分離も余り良くないのが
普通です。
ところがK2HDでは楽器の分離が物凄く良く、奥行きまでも感じられたのでビックリしました。さらに
メル・トーメの声は艶があり、殆ど肉声と変わりありませんでした。特に曲の合間でメル・トーメが曲の
紹介をしているのですが、本当にその場で誰かがしゃべっているように聞こえゾクッとします。
K2HDが高音質であることは他のアルバムで確認済みでしたが、これには参りました。多分元の
マスターテープの録音が非常に良いことと、K2HDが人間には聞こえないとしてカットされてしまう
20kHz以上の成分を含んでいるため、このように聞こえるのだと思います。
目の前にライヴステージを再現してみたい方は、是非このK2HDを聴いてみて下さい。SACDに迫る
音場を得られるものと思います。CD開発当初のデジタル臭い固い音に比べると、良くもここまで
進化したものだと関心させられました。