カラヤンの演奏があまり好きではない筆者ではあるが、この交響曲第7番に関してはNHKによる、カラヤン=ベルリン・フィルのコンビによるフィルハーモニー・ホールでの録画公演を観て、演奏を聴き、この曲の魅力に取り憑かれ、同コンビによるCDを購入した。このCDは、カラヤン=ベルリン・フィルによる最後の「ベートーヴェン交響曲全集」の中の1枚である。「一糸乱れぬアンサンブル」とはまさにこういう演奏をいうのだろう。迫力ある「オーケストラの合奏美」を楽しむには最高の演奏である。
この曲は純粋に「交響曲」として鑑賞することもできるが、日本人指揮者「某T氏」によると、この交響曲は全ての楽章にダンスの要素が隠されていて、それぞれのダンスの雰囲気を聞き分けて楽しむという鑑賞の仕方もあるそうである。第1楽章は、いかにも交響曲らしい序奏で始まる(この曲の振り出し(冒頭部)は交響曲第5番同様、オケが自分の指揮通りに音を出してくれるか緊張が極度に高まる瞬間らしい)、その後は2つのリズム(舞曲)が出現する。1つ目の舞曲は少し重厚だ。2つ目の舞曲はかなり軽快でのびのびとしている。第2楽章は「喪服を着た女性が愛する人を思い出しながら、ひとり悲しく、追悼のダンスのまねごとをする情景」らしい。第3楽章は、基本的に3拍子の音楽で、言うまでもなく「円舞」である。第4楽章は、酒に酔ったパーティの出席者たちの半ば狂喜乱舞する様子、なのであるらしい。確かに、曲目解説には、この曲について「後にワーグナーが、『舞踏のアポテオーゼ(apotheosis=神髄、極地)』と語った」とか、「リストが『リズムの権化』と言った」とか、「クララ・シューマンの父ヴィークが『ベートーヴェンはこの曲を酒に酩酊しながら作曲したようだ』と評した」と書かれている。ベートーヴェンというと、あの有名な苦悩に満ちた、しかめ面の肖像画から「堅苦しい音楽を作曲した人」という印象を多くの人がもつが、曲の中に隠されたからくりを知り、それを楽しみながら聴くと音楽から受ける印象はまったく異なってくる。それも、楽しみ方のひとつだろう。
交響曲第4番は「おまけ」のようなもの。あまり聴く機会のない曲なので、「こういう曲か」と思って聴けばよいのではないでしょうか。