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『隠し砦の三悪人』('58)
出演∶三船敏郎、千秋実、藤原釜足、上原美佐、藤田進、樋口年子、志村喬、三好栄子、藤木悠、土屋嘉男、高堂国典、加藤武、三井弘次、小川虎之助、上田吉二郎、富田仲次郎、田島義文、沢村いき雄、大村千吉、堺左千夫、佐藤允、小杉義男、谷晃、佐田豊、笈川武夫、中丸忠雄、熊谷二良、広瀬正一、西条悦朗、長島正芳、大橋史典、大友伸、伊藤実、鈴木治夫、金沢重勝、日方一夫、中島春雄、久世竜、千葉一郎、砂川繁視、緒方燐作、山口博義、坂本晴哉、日劇ダンシングチーム
監督∶黒澤明
主に洋画から入って映画ファンになった。日本映画はまだ初心者だった頃に､小さな名画座に掛かっているのを見つけたのが『隠し砦の三悪人』だった。映画ファンになる前から黒澤明の名前と『羅生門』『七人の侍』『用心棒』のタイトルぐらいは知っていたが､『隠し砦の三悪人』は知らなかった｡「マカロニ·ウェスタンを連想させるようなタイトルだなぁ」とあまり期待しないで見たら､これが面白い!!!
冒険活劇的な映画は狭い日本が舞台では､大陸が舞台の外国映画に比べて､スケール感が小さくてショボいものになりがち。ましてや時代劇では……と思っていたら､それまでに見た時代劇とは別モノだった。序盤､焼け落ちた城跡で隠し金発掘の強制労働をさせられる敗軍兵らが暴動を起こす場面のスペクタクルなど､まだ主役の侍大将·真壁六郎太と雪姫が未登場で本題が始まる前だ。並の時代劇とのスケールの違いを見せてくれる。
この映画がジョージ·ルーカス監督の『スター·ウォーズ Episode 4』('77年製作のシリーズ第1作)の元ネタになったことは今や有名。私は初めて『スター·ウォーズ』を見た時には類似点に気づかず､のちにルーカスの談話を聞いたとたんに､ファースト·シーンの太平=C3POで、又七=R2D2だと思い至った。雪姫=レイア姫?、田所兵衛=ダース·ベイダー?、主人公·真壁六郎太=ルーク＋ハン·ソロ＋オビ=ワン·ケノービの1人3役? あ､太平と又七のキャラがハン·ソロとチューバッカの役にも分散されてる?
『ダーティ·ハリー』『地獄の黙示録』の脚本､『デリンジャー』『ビッグ・ウェンズデー』の監督で知られるジョン·ミリアスの作品『風とライオン』で､アラブの族長(ショーン·コネリー)が愛馬に跨り､刀を構えて疾走するシーンは､『隠し砦』の真壁六郎太のアクションへのオマージュだとか。海外の映画にも色んな影響を与えているようです。
[物語] 戦国時代､百姓の太平(千秋)と又七(藤原)は立身出世を目論んで､秋月家と山名家の合戦を目指すが戦に間に合わず､負けた秋月の落武者と間違われて､焼け落ちた秋月城跡の埋蔵金探しの奴隷労働をさせられるハメに。その夜､捕虜たちの大暴動が起き､太平と又七はそれに乗じて脱走して町から離れた山中に逃れる。そんな二人が飯炊き用に拾ったマキの中に､秋月の紋章入りの金の延べ棒を発見する。マキの中に仕込んだ大量の隠し金が山中の何処かに……!?
そこへ屈強な大男(三船)が現れ､自分も山中の隠し砦と隠し金の一部を発見したと言い､太平と又七に親分風を吹かせて､埋蔵場所を探すよう命じて､あちこちを掘らせる。男の正体は､秋月家の侍大将·真壁六郎太。一部重臣らと世継ぎの雪姫(上原)を守って､隠し砦に潜んでいたのだ。金を仕込んだ大量のマキは､泉水の底に隠してあった。秋月家再興のために､埋蔵金とともに雪姫を同盟国の隣国·早川領に脱出させたいが､早川との国境は山名家の手勢で固められていた。
埋蔵金を発見して他国に逃げたい太平と又七は､警備の固い早川との国境を避け､大胆にも敵国·山名領を通り抜けて早川領に抜けるという妙案を持っていた。その案に乗った六郎太は太平と又七に命じて､延べ棒入りのマキを３頭の馬に積ませる。雪姫に唖娘のフリをさせて２人にも正体を隠し､大量のマキを運ぶ３人の山の民と１人の女に身をやつす。かくして正体を隠す侍大将と姫､金に目の眩んだ強欲な２人の百姓の敵中突破の危険な旅が始まる……。
未見だが､『日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里』という映画が前年の'57年に大映で製作されている。黒澤明の脚本作品だ。戦前の山中峯太郎の冒険小説を､監督になる前の黒澤明が脚本化していたものが基になっているとか。この『隠し砦』も､その辺から着想を得たのだろうか。まさか戦前の日露戦争ものの冒険小説が､廻り廻って『スター・ウォーズ』に化けるとは､誰も夢にも思わなかったでしょう(笑)
ジョージ・ルーカスがまだ『アメリカン・グラフィティ』しかヒット作がなく､SF映画がB級映画もしくは子供向け映画と見なされていた'70年代に､『スター・ウォーズ』を準備中のルーカスから､三船敏郎にオビ=ワン·ケノービ役の出演依頼があったそうだ。しぶる三船氏に「では､ダース·ベイダー役では？」と食い下がったようだが､子供向け映画には出たくないと固辞されたらしい｡
もし三船氏がオビ=ワン役で出演していたら､シリーズの後続作品(Episode1〜3)でユアン・マクレガーが演じた若き日のオビ=ワン役は､渡辺謙か真田広之だったかも……!?(なんてね)
※以下は､ネタバレ的なことを書きますのでご注意！
クライマックスで敵将·田所兵衛が「裏切り御免!」の一言であっさり雪姫や六郎太の側に寝返る場面には一瞬あっけに取られたが､裏切り·謀反·日和見が日常茶飯事だった戦国時代が背景であることを考えると､なかなか痛快である。そう言えば､『スター・ウォーズEpisode 4』のクライマックスでは､レイア姫を送り届けた謝礼金だけ戴いて去ったはずのハン·ソロのファルコン号が突如現れてルークを救う痛快シーンがあるが､"裏切り御免!"の変形かも。考えすぎか？(笑)
ラストの早川の城の(お白洲みたいな)石庭のシーン､六郎太と雪姫が正体を明かし､太平と又七に褒賞金を与えるところは､『スター・ウォーズ』のラストの表彰式(叙勲の式?)のシーンの原型であろう。
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