ファーストアルバム「奇妙な群像」から、驚くほどの進化を見せている問題作。特にボーカル山本美禰子の歌は、別人と思われる程に表現力を増していて、楽曲によってクラシックであったり、民俗調であったり、様々な歌唱法を用いながら、誰にも真似できない歌世界を構成している。また随所で多重コーラスが採用されており、楽曲に奥行きを加えている。
サウンド面でもギタリスト永井が本作から加入したことによって、ギター二本のアンサンブルが際立ち、よりバンドの一体感が増したといえるだろう。
また特筆すべきは、ボーカル山本美禰子の描く、歌詞世界である。
神話や古典文学、分析心理学を下敷きに構成されたという歌詞は思索に富んでおり、全体的に神秘的な印象を受ける。またブックレットに掲載されたヘキサグラム(六芒星)と曲名が対応した図形や、冒頭に引用されたリルケの詩も、その印象を強めている。
「SYZYGIA」(シュジュギア、もしくはシジジア)とは、”相対する一対のもの”という意味であると書かれており、これは一種のコンセプトアルバムといえるだろう。
基本的なサウンドはロックであるが、楽曲の内容は幅広く、「ヘキサグラム」や「琥珀の杯」のポップな耳当たりの良さ、「青い樹」や「MEMORANDA」などの痛快なロックサウンド、「ユビキタス」や「ムーサの神託」の神秘的な静けさ、「Myrninerest」や「一角獣と少女」のアヴァンギャルドな狂気を垣間見せる楽曲など、様々な要素を楽しむことができる。
必聴の一枚!