リンチ監督の映画では音楽に対する映像刷り込みが凄まじく、「イレイザーヘッド」の挿入歌「IN HEAVEN」はその後の多くのカヴァー(ピクシーズ、パンコウ、ミランダセックスガーデン)を聴いてもオリジナルの映像を拭えない程のトラウマを受けました。
同様にボビー・ヴィントンの「ブルーベルベット」やロイ・オービソン「イン・ドリームス」も映画内の強烈な異化作用を受けた状況で初めて触れた為に原曲の発表時とは徹底的に異なる歪んだ印象が条件付けられてしまいました。
INLAND EMPIRE内でも「ロコモーション」やエンディングを飾った「シナーマン」は女性達の踊り共々強烈でした。
但し「シナーマン」に関してはリンチの画像に負けず独立して聴いても非常に感動的です。
一部東欧も舞台にしている映画の内容と原初的な曲調からロマ系の男性アーチストに拠る作品と勘違いしていましたが、とても有名な女性ジャズシンガー&ピアニスト、「ニーナ・シモン」による他の映画や宝塚の舞台でも頻繁に使用されている名曲である事を知る事が出来て幸甚でした。
他にリンチ自身の作曲・ヴォーカル入りの不穏な音響処理をされた曲が収録されており、ノイズ・インダストリアル系の音楽がお好きな方にもお薦めです。