2015年のお正月、『ベイマックス』の日本版エンドテーマに使用され、映画館の場内を涙の海にしたと言っても過言ではないAIさんの「Story」英語ver.の、ヒットした日本語のオリジナルが聴ける、何かいいコンピはないかなー……と探していて見つけたのが、この2007年に発売された『TEARS〜J-POP Selection』。 まず、ジャケットというか、アートワークのセンスがいい。 「これは借りたい」、でもいいとは思うけれども、このジャケットは「これは持っていたい!」、という気持ちにさせてくれるように思う。 「Story」だけでなく、『秒速5センチメートル』のクライマックスでも効果的に使われていた「One more time, One more chance」、ヴォーカリストとしての森山直太朗さんの“凄さ”を再認識させられる「愛し君へ」など、まさにキラー・チューンと呼べる楽曲も多いが、「間違いなく泣ける歌、満載!」というのとはちょっと違っていて、“涙、涙”から、懐かしくも新鮮な90年代ヒットのラスト3曲へとつなぎ、少しずつ“笑顔”を取り戻して行く……そんなイメージで、比較的新しい「いい歌」「聴かせる歌」を集めた、かなりいい構成のコンピだと思う。 この15曲の中でやはり気になるのは、個人的にも着メロを愛用していた思い出のある「雪の華」だけがオリジナルではなく、アルバム『VOCALIST 2』に収録され、先行シングルとしてもリリースされていた徳永英明さんのver.だということだが、そこはこの『TEARS』が、徳永さんの所属するユニバーサルからの発売ということで、いわゆる“大人の事情”というやつだろう(個人的には、徳永ver.の「雪の華」もお気に入りだが……)。 ちなみに通常、コンピ盤に収録できる他社音源は全体の半分まで、ということになっているらしく、このCDの発売時点での他社音源は、15曲中7曲であった(後にEMIがユニバーサルに吸収されたため、他社音源は2曲減って5曲となっている)。 ブックレットには歌詞のほか、田井裕規さんによる簡略な楽曲解説が掲載されており、各楽曲との思い出をよみがえらせたり、アーティストへの理解を深めることもできることだろう。