菅野よう子が音楽を手掛けた『エスカフローネ』にてデビュー以来、彼女の歌を聴いている。
正直ギクシャクした感のあった菅野離脱後の初アルバム『夕凪LOOP』を経、最新アルバムの
『30minutes night flight』に至って、やっと本来の彼女らしさが波に乗ってきたと感じた。
やはり彼女、坂本真綾は「歌を歌ってこそ光る人」だった―それも"彼女自身だけの"。
本作「さいごの果実」にて、さらにその思いが強くなった。個人的に『夕凪〜』の
h-WONDER曲他も決して嫌いではなかった。それはたぶん坂本真綾自身の歌だったから。
そして、鈴木祥子曲の本作も素晴らしい色彩(いろ)を持っている。
…いや、むしろ無色透明とでも言った方がよいかもしれない。
元々真綾という人は何物にも染まらない自分自身の色を持っている人だと思う。
でもその実、何にでも染まれる資質も同時に持ち合わせている稀有な人。
(本題から少し離れると、演技面では最新作の『空の境界』が楽しみだ)
彼女の歌声=彼女自身。そう思うからこそずっと坂本真綾が好きだったのだ。
だから、おそらく心配は何ひとつ要らないだろう。何より「さいごの果実」という、
今この時のこの歌声が、今この時を生きている彼女自身を如実に表しているから。
たとえもし菅野作品に戻ることがなくても、安心して今後の彼女を見守ってゆける。
これからもずっと、その彼女自身のうちに眠る彼女だけの羅針盤を信じたい。
何物にも染まることのできる柔軟さ=揺るがぬ自分自身を持っているという
その確かな証拠がここにあるのだから―その無垢な姿は、どこまでも美しい。