そもそも、「メリーベルと銀のばら」を45分のドラマに圧縮すること自体が無茶なのでは? サブプロットの多くが切り捨てられ、折り畳まれて、かなり味気ないことになっています(水車の伏線が回収されないまま消滅したりとか)。原作には、意味のないエピソードや台詞がひとつもないので、取捨選択に苦慮されたのは伝わるのですが。
また、無意味に言い回しを変えた台詞が散見されますが、やはり「メリーベルをお空にほうりあげる」と「ほうり投げる」、「それはユーシスを殺したものだぞ」と「そいつはユーシスを殺したんだ」は全く違うだろうと思います。原作読者の方なら、この感じ分かっていただけるでしょうか。
役者さんでは、ユーシスの脆さ儚さを序盤から予感させて欲しかったところ。マドンナのキャスティングは謎です。そんな可愛い声で「13歳のねんねちゃん」呼ばわりされても、メリーベルは痛くもかゆくもなかろう...というか、役者さんご自身が一番当惑されてるのでは? エドガーはストレートに感情を出すシーンが比較的多く、胸が熱くなりました(小さいエドガーの愛らしさ、鼻っ柱の強さも必聴)。
SEはやっぱり火サス顔負けというか、凄いです。鴉かと思ったら赤ちゃんメリーベルの泣き声だったり、雪路を走る馬の蹄音が異常に軽やかだったり。音楽については、舞踏会の曲がチャイコフスキー(19世紀)とサティ(20世紀)。これ、18世紀の物語なのですが...ノーチェックで世に出てしまっているんですよね(時代が合っていたとしても、貴族の舞踏会で演奏されるかどうか微妙な感じですが、詳しくないので明言は避けます)。言い出せば「トラックとトラックがくっつきすぎていて、余韻もヘッタクレもない」とかキリがないのですが...あちらこちらで制作側の脇の甘さみたいなものを感じてしまいました。(それでも作品全体のクォリティは徐々に上がってきている...と思います)