lucky thonmpson(ss,ts)のワン・ホーン。prestigeよりの64年作。
…数ヶ月前に、nathan davis(ss,ts,fl)の音源が顧みられた時期があった。その時に私もdavisの音源を幾つか愉しく聴いていたのですが、廉価盤の本作も同系のプレイヤーだと思え、購入してみたところdavisが聴けなくなってしまった…という事があった。
実際は同系という事もなく、thompsonの方が年長でスタイルもやや古風です。そのアーティキュレイションから、スゥイング期に鍛えた腕であろうことは見当がつく。
本盤はいきなり“in a sentimental mood”で始まる。
やはりソプラノを吹いているが、静寂に包まれた場末の一室で、細い透明な煙の線が緩やかに立ち上っていく…という風情を醸し出している。他はthompsonの自作が多いのですが、何れも聴きやすく、しかし渋い。音色の柔さと、或る種の“儚さ”の感覚の同居は、この盤に独特な雰囲気がを齎していて素晴らしいです。裡半分はテナーを吹きますが、個人的にはソプラノの方が良かった。稀な美しいひびきです。
最後に、connie kay(ds)とrichard davis(b)の仕事の良さも付記したい。とりわけ後者は、いつもの鬼神の佇まいが消え、上記の雰囲気と一体化しています。もちろん、演奏は全て素晴らしい。赤と黒の2色刷りのジャケットも、陰影感あり好ましいと思います。