ブルーノートにおける1st『Takin' off』が、いかに評判がよかったからと言って、自分のリーダーアルバムを、
こんなにリラックスして作れるものなのかと驚く。だが、録音メンバーは前作と同じミュージシャンが1人も
いない。ということをほとんど感じ取らせないほど、全体はハービー色に染めあげられている。ドナルド・
バードもフレディ・ハバードみたいに聴こえるし、トニー・ウィリアムスもまだあのマイルス・コンボでの
アグレッシブなプレイにはなっていない。むしろ時にはもっさりして聴こえることもあるので(M5など)、
やはりあのものすごいプレイは、マイルスありきの鬼気迫る極限世界だったのだと知る。
全体としては、全曲自作曲。バンドとしてはホーンが1人増えて、ギター(グラント・グリーン)が参加。
M1はほとんど「ウォーターメロンマン」なので、新味に乏しく感じられる。M2「A tribute to someone」
になると、『処女航海』のサウンドを感じさせるような瑞々しいピアノから始まる。M1をやめて、ここから
アルバムをスタートさせていればよかった。後にビル・エヴァンス・トリオに参加するチャック・イスラエルの
繊細なベースプレイが光っている。各ソロも伸び伸びとして佳作に仕上がっている。
M3、M4は、トロンボーンを加えた3管での音色表現が実践されている。これは『Speak like a child』で
より精緻に徹底して表現されることになる。M5は再びM1と同じファンキー路線だが、ジャムセッション的な
雰囲気で(リズムもよれよれ)、完成度は高くない。