『ニュース・フォー・ルル(News for Lulu)』は、ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)、ハンク・モブレー(Hank Mobley)、フレディ・レッド(Freddie Redd)、ソニー・クラーク(Sonny Clark)が1950年代から1960年代初頭に作曲したハード・バップの楽曲を、前衛的でジャンル横断的な音楽で知られるアメリカ合衆国の作曲家・サックス奏者・編曲家・プロデューサーのジョン・ゾーン(John Zorn)(alto saxophone)がトロンボーン奏者のジョージ・ルイス(George Lewis)(trombone)、ギタリストのビル・フリゼール(Bill Frisell)(guitar)と結成したトリオが演奏したアルバム。
本作は1987年にスイスのルツェルンでスタジオ録音され、1988年にHat Hut Recordsから発売された。
全20曲収録。トラック1-17はスタジオ録音。トラック18-20は1987年8月30日のヴィリザウのジャズフェスティバルでのライヴ録音。
ハード・バップの楽曲を、ピアノやベース、ドラムなどのリズム・セクションを担う楽器を排してアルトサックスとトロンボーンとギターのみで演奏した、珍しい楽器編成によるアルバムである。
ゾーンによるフリー・ジャズ風のサックス演奏と現代的なアレンジ、集団即興演奏を含んでいるが、基本的には原曲の楽曲構造の忠実な再解釈である。
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ(Art Blakey and the Jazz Messengers)の「モーニン(Moanin’)」やリー・モーガン(Lee Morgan)の「ザ・サイドワインダー(The Sidewinder)」などの有名な曲を避けて、あまり頻繁にはカヴァーされない曲を多数収録した、ユニークな選曲が特徴である。
オリジナルのアルバムジャケットは、ゲオルク・ヴィルヘルム・パープスト監督のサイレント映画『パンドラの箱』(1929年)で「ルル」を演じた女優のルイーズ・ブルックスの写真を使用している。
本アルバムは1990年、1993年、2008年に再発売された。1993年と2008年の再発版のアルバムジャケットはオリジナルとは異なっている。
2008年の再発版はボーナス・トラック1曲を追加収録。
ゾーン、ルイス、フリゼールのトリオは本アルバムと同じ編成によるハード・バップの楽曲のライヴ演奏(1989年)を収録したアルバム『モア・ニュース・フォー・ルル(More News For Lulu)』を1992年にリリースした。