俳優として数々のキャリアを持つアンソニー・ホプキンズ氏の監督作品、実験的で先鋭的な意欲作だと思います。夢か幻か、実に不合理な映像やカットアップに幻惑させられながらストーリーが進んでいきますが、ラスト間際でその映像の意味が明かされていきます。
個人的には、ラストになって初めてこの映画がどういうものなのか理解した時の衝撃は大きく、随所に挿入されるカット・アップや、登場人物のキャラクターがそれぞれ持つ意味について考えさせられ、何度も観てしまいました。その映像からデヴィッド・リンチ氏の作品と比較される方も多いようですが、これはよりパーソナルな色彩が色濃く、その上で潜在意識に訴えかける作品だと思います。メインの俳優たちの演技も素晴らしかったです。
ですが、そのパーソナルさ故に、決して一般受けはしないであろうと思われます。DVDには特典としてオーディオ・コメンタリーでアンソニー・ホプキンズ自身の解説が収録されており、彼自身もコメンタリーで『殆どの人はこの映画が嫌いだろう、でもいいんだ、好きにしてくれ』と諦めてもいますので・・・でも、その監督の、映像の不合理さも含めて好きになる人なら、きっと何度でも観てしまう作品だと思います。