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●たいていどのジャンルにおいても、シンガーは、激情で歌い上げる系か穏やかに語る系に大別できる。本作の主役クレール・エルジエールは、完全に後者である。
●より細かく言うなら、テクニックを見せびらかしたりせず素直に、言葉を、メロディを歌う。「フレンチカフェミュージック」というタイトルにぴったりな雰囲気である。ピアフやバルバラが表現してみせた、壮絶なシャンソンとは真逆の世界観である。
●特に、ピアフの絶唱が不動の名曲たらしめた「愛の讃歌」はその好例である。実にさらりと、愛を歌う。ピアフに負けじと大袈裟に歌い上げる歌手が多い中、肩の力を抜いて、素直に表現している。これが、彼女の真骨頂であろう。
尚、伴奏はと言うと、腕利きギター、アコーディオン、ベースを中心としたコンパクトな編成なので、クレールの素朴な歌声とうまく解け合っている。
●絶唱型シャンソンをお求めの方には物足りなく感じられるかもしれないが、肩の力を抜いて歌われるそれはまたオツなものである。ドロドロばかりがシャンソンではない！
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