ユーゴの1950年6月からの二年間、当時のセルビアのごく平凡な家庭に起きた出来事を通して、陰湿な政治体制の中で翻弄される庶民の姿が、あるがままに重く哀しいトーンで描かれていく。
人はままならない現実の中で、得体の知れない何かに操られ、無力であることを自覚し、それでも生きなければならないことがある。そして、それでも生きていくのだというしたたかな思いが、主人公の少年がラストに薄明の中で薄ら笑うシーンとして象徴的に描かれる。
ジャケ写前列の主人公の弟とお兄ちゃんが個性的で魅力的。そして二人には有り余るほどの未来がある。それはたとえ、暗い時代のユーゴであったとしても。
メインで流れる哀愁を帯びた「ドナウ川のさざなみ」のアコーデオンの音が心に沁みる。