『DESIRE』と『EVE』の陰に隠れがちな『XENON』。そのBGMにスポットライトが当たった奇跡の1枚。
DISK Aには、梅本竜自身の再録音・リマスタリングによるPC-98のオリジナル音源(YM-2203)版が、
DISK Bには、盟友・高見龍が再録音とリマスタリングを担当したFM-TOWNS版(音源はYM-3438)が、
新たにリミックスされたボーナストラックと併せて、それぞれ1時間以上に亘って詰め込まれている。
"夢か現か"という感覚が常に付きまとうゲームのBGMだけに、謎めく靄のようなフィルターを意識して、
決してメロディアスになり過ぎることの無いように、細心の注意を払った曲作りが為されている。
それでも前作で得た経験を元に培われた自信が、豊かな音色での堂々たる楽曲を生み出したのか、
音楽的には『YU-NO』にも引けを取らない、魅力的で充実した梅本節を堪能することができる。
この後の『EVE』では、作曲の方法が体系的でもう少しストイックなものになることを考えると、
PC-98時代の作品としては最も本能的な響きを持つのが、この『XENON』のBGMなのかも知れない。
そう考えると、FM音源とPCM音源からなるFM-TOWNS版が同時収録されているのにも必然を感じる。
落差を狙った曲以外で発揮される甘い浮遊感は、まさにこのBGMにこそ打って付けの要素だからだ。