「カップルがイチャイチャする場所(ex. ドライブインシアター)」を意味する、ちょっと古臭くも素敵な言い回しをバンド名とするPassion PitのデビューEP。
元々がマイケル・アンジェラコス(ボーカル)の恋人へのプレゼントが本盤に結晶しているだけあって、キラキラしたloveに溢れた陽性の電子ポップ作品である。エコー処理した裏声ボーカルが醸し出す少しドラッギーな味わいも強烈に個性的だが、マイケル自身が双極性障害(躁うつ病)で入院経験があり、上記の「恋人への贈り物」というのも病気が原因で傷つけてしまったことによる謝罪の意味合いが強かったという。そういうエピソードを踏まえると、本作が躁状態のような陽気さと内向的な繊細さの両方を醸し出していることも頷ける。
しかし、何よりも感動的なことは、そんな凡庸な理屈だけでは説明のつかない、素晴らしいメロディ全体から溢れるloveである。サウンド・プロダクションからもメンバー達の知性と真摯さ、センスの良さが放射されているが、一方で若いバンドにありがちな自己顕示欲やナルシシズムが全く感じられない点も本当に素晴らしい。