ジャザノヴァへの印象を一変させた、彼らの2ndオリジナル・
アルバム『Of All the Things』です。ジャザノヴァは数々の
コンピをリリースしていますが、純粋なオリジナル・アルバム
となると2枚しかリリースしていないのですね。常にシーンの
最前線にいるイメージがあるので、これは以外です。
少し脱線しましたが、なぜ『Of All the Things』が
彼らのイメージを一変させたかといいますと、このアルバムが
ソウルに大きく振れたアルバムだったからです。全ての曲に
ヴォーカルが入り、温かみのあるサウンドがあって、これぞ
理想のソウルという音が繰り広げられているのです。
まずはあのLittle BrotherのPhonte(!)をフューチャー
しての『Look What You’re Doin’to Me』。ギターの印象的な
メロディが繰り返されるナンバーで、バックのコーラスや粒子の
粗いサウンドがレトロ・ソウルという言葉を連想させます。
ラファエル・サディークの音楽性に近いですかね。
続いての『Let Me Show Ya』はPaul Randolphをフューチャー
していますが、彼の歌声はとろけるような甘さと、伸びの良さが
あって、聴いているとうっとりとしてしまいます。よく跳ねる
ドラムのキレが抜群で、曲に爽快感をもたらしています。
Ben Westbeechをシンガーに迎えた『I Can See』はスタックスの
黄金期を彷彿とさせるサウンドに仕上がっています。爆発力の
あるドラム!これですよね。バシっとはじけるようなサウンドは
血を熱くしてくれます。あの頃の雰囲気たっぷりのメロディを
奏でるストリングスも最高です。
一転してムーディーなジャズ・ナンバー、『Little Bird』です。
この曲でヴォーカルをとっているのは、その歌声でジャイルス・
ピーターソンも虜にしたホセ・ジェイムスです。ソロ・アルバムも
好調でしたが、それが納得できる素晴らしい歌声です。ピアノと
ストリングスという最小限の演奏が、ホセ・ジェイムスの歌声の
美しさを際立たせます。後半にドラムが入ってからは一気に温度が
上がり、また違った感動を与えてくれます。
そして再びPhonteをフューチャーしての『So Far From Home』は、
Phonteのラップが最高にかっこよく、痺れます。非常にソウル色の
強いバック・トラックと、Phonteのラップの相性も抜群です。
デビュー当時ピート・ロックと比較された9th Wonderが音を作っていた
Little Brotherを思い出しました。本当にあの1stはドゥープでした。
そして、一つの曲の中でどんどんバック・トラックが変わっていく
曲が個人的にはとても好きなのですが、この曲はまさにそれですね。
アルバムのハイライトといっていい素晴らしいナンバーです。
冒頭のメロディ、そしてベースが明らかにスティーヴィー・
ワンダーを意識させる『Lucky Girl』。頭にスティーヴィーを
置いているからか、Paul Randolphのヴォーカルもそれっぽく
聴こえてきます。スティーヴィーが得意としていた、明るく
ポップなソウル・ナンバーで、その完成度の高さに驚かされます。
さらにはPedro MartinsとAzymuthというブラジリアン・
ミュージックのビック・ネームをフューチャーした『Gafiera』。
文句のつけようのない、あまりにも美しいナンバーです。リズムを
刻むギターも爪弾かれるギターも、曲に微妙な表情をつけていく
ドラムも、そしてハッピーな歌声も、全てが美しく溶け合っています。
名曲。
Five Corners Quintetなどのクラブ・ジャズを彷彿とさせる
『Morning Scapes』もまた完成度の高いナンバーです。途中に
フルートのソロを持ってきたりと、展開的には王道なのですが、
そのクオリティの高さでグイグイとリスナーを引き込んでくれます。
ヴォーカルのBembe Segueの声もまた曲にぴったりですし、本当に
素晴らしいクラブ・ジャズです。
とにかく名曲がずらりと並んだアルバムというのが、この
『Of All the Things』の印象です。そして、その中にオールド・
ソウルあり、しっとりとしたジャズあり、ブラジリアン・
ミュージックあり、クラブ・ジャズありというバリエーションで、
またそれぞれの完成度が恐ろしく高い!もう信じられない領域に
入っています。何度も繰り返して楽しむことのできる真の名盤だと、
自信を持って言い切ることができます。めちゃくちゃお洒落な
ジャケットも最高ですし、これは絶対に手に入れていただきたい一枚です。