'91年にリリースされた安らぎと美しさを兼ね備えた秀作です。奥様の描かれたジャケットが印象的ですが、これに惹かれて買ったのがWyattとの最初の出会いでした。
抽象的な水彩を思い浮かべさせるような印象的な繊細さや透明感を感じる音作りはやはり彼独特のものです。前衛Jazzや現代音楽的な要素を織り込んだ凝った音作りは彼の作品に欠かせないところですが、本作では他の作品に比べて控え目の観を持ちます。ここでは彼のピアノとヴォーカルが主役であり、彼のピアノが好きな方には大切にされそうです(私もその一人です)。
突如、軽快なピアノとユニゾンで歌い出される"Dondestan"に新鮮な意外性を感じつつ、耳にこびりついてしまうメロディ。また、"Worship"の穏やかな表情や"Catholic architecture"の静かな佇まいなども魅力的ですから、コアなファンの方のみならず、より多くの方に好かれそうなスタンスを持っていると思います。
何度か聴いているうちにジャケットに描かれた風情とのマッチングにほっとした気持ちになってくる、身近に置いておきたい親しみを感じてしまう一枚です。