最近,90年代に活躍したアーティストが久しぶりにアルバムをリリースするという機会に接することが多くなった。ベビーフェイスやダリル・シモンズらの庇護を受けて95年に鳴り物入りでデビューしたデボラ・コックスも例外ではなく,本作は前作から6年ぶり,しかもマイナー/レーベルからのリリースとなる。
時は移ろうもの。音楽やファッションには流行り廃りがあって・・・・と言われればそれまでだが,卓越した歌唱力を持ちながら,流行に合うかどうかでアルバム・リリースの機会さえ与えられないというのは昨今のミュージック・シーンも商業路線が過ぎるのではないかという気がする。
但し,6年ぶりだろうが,マイナー・レーベルからだろうが,本作の内容は充実している。
冒頭の3曲がいい。春の陽射しにも似た麗らかで穏やかなバラード「Love Is Not Made In Words」,ときめく乙女心を想起させるドリーミーなアップテンポの「You Know Where My Heart Is」,感傷的なまでに甘美でドラマッティックな「Did You Ever Love Me」。これだけでも本作を購入したと十分に意義はある。中盤は「Beautiful U R」。タイトなビートで少しハード・エッジに仕上げたAOR寄りのアップテンポで,サントラに使われそうなキャッチーなナンバー。僕は結構気に入っています。しっとりと落ち着いた甘美なメロディーでゆったりと夢の世界に誘う「All Over Me」は,深夜の摩天楼を想起させるような摩訶不思議な空気がいい。エンディングは,哀感を帯びたメロディーを凛としたヴォーカルで壮大に歌い上げる「Where Do We Go 2」。シンフォニックでドラマティックな展開が印象的だ。
こうして聴いてみると,ビヨンセやレオナ・ルイスといった旬なシンガー達とひけを取らない華と歌唱力が感じられ,今もディーヴァ(歌姫)としての輝きに満ちている。こういうアーティストやアルバムこそが高く評価されてくれたら・・・・そんな気にさせる会心作だ。