「はばたく未来」「idea」「リフレクティア」...そして「アネモイ」。
玩具箱の中で光る色ガラスのビー玉を透かして見たような、
あるいは、まだ何も知らなかった頃の無邪気で純粋な好奇心
そのものを結晶化させたような... eufoniusが紡ぎだす、
繊細にして軽快な音楽の次章は、やはりご多分に漏れず、
そんな独特の透明感と空翔る疾走感を体感させてくれた。
現実と非現実の壁を飛び越えて響くriyaの無垢な歌声は、そして
まるで万華鏡を覗いた時のキラキラした気持ちを思い起こさせる、
デジタルに頼り過ぎないナチュラルで繊細な菊池創の楽曲は、
ファンタジーで片付けてしまいがちな異世界モノによく似合う。
その中心にある「想いの結晶」が、空を飛びたいと願う本当の理由、
見知らぬ世界に行きたいと誘う本来の思いをいつでも心に呼び覚ます。
品のあるストリングスから踊るように滑り出す今回のマキシは、OPを飾る
『空を見上げる少女の瞳に映る世界』の世界観をあますところなく表現。
時にリリカルにアコースティックに時に躍動的に奏でられる、その無邪気な
好奇心は、いつでも夢見ることの真実(ほんとう)を教えてくれる。その輝く翼が
確かに心にあることを感じるから、彼らの音楽にいつでも魅了させられるのだ。
まるで乙女心のときめきそのままに、少女のままに、どこまでも夢見る鼓動。
今回の「アネモイ」は比較的シンプルストレートな楽曲構成で、
それだけにその少女と少年の世界を繋ぐ物語を、より素直に彩って
巧みに心を掴んでくれる。12時を過ぎても夢から覚めないシンデレラ。
天空の城を信じて飛ばしたプロペラ飛行機は、ゴムが巻き戻っても、
今もまだ空を旅している。それは"風の女神(アネモイ)"のいたずら。
肌に髪に心地よい風の中を駆け抜けながら、その向こうで待つ
誰かとの出会いによって作り上げられる、新世界の化学反応。
――怖れずに信じることの本当の強さを、光を感じる喜びと希望を。
もしもこんなささやかでキレイな音と歌声で世界を変えられるのなら、
それはきっと形のない音楽は形のない心そのものだからなのだろう。