71年、ジョン・レノンとオノ・ヨーコからカンヌ映画祭でサインをもらった意外とミーハーな若松プロのコンビ(若松孝二と足立正生)はどういうわけか帰路にパレスチナに逗留する。その時撮影した街や道路、手製爆弾の製造、すでにパレスチナに拠点を移した重信房子のインタビュー。これらを素材に日本における赤軍派集会や各ハイジャックの映像を足してドキュメンタリー風にコラージュした作品。およそ商業映画には相応しくないフィルムだが、全世界(?)で上映運動が行われ「怖いモノ見たさ」や「オレは根底から現代社会を否定しているし」という人々によって視聴された。
私は、ずいぶん昔に松田政男編集の『映画批評』の古本で、この映画のシナリオを発見し、こうした突き抜けた作品が存在することに腰を抜かした。近年どういうわけか、DVDで発売。さらに『止められるか、俺たちを』でも足立正生とともにこの作品の上映運動が紹介された。監督の足立正生は数作若松プロのピンク映画を製作したのちに、またパレスチナに飛び、日本赤軍に合流し、レバノンで逮捕・懲役後強制送還される。
映画は、共産同赤軍派の立場に依拠し、徹頭徹尾、観念的で何かに酩酊したような論理なき過激な言葉が連結されたナレーションとそのメッセージの字幕からなる。「銃口」という言葉が逆プリントされ、他者に向けられた銃弾であることが示唆される。また、革命左派(京浜安保共闘)との共闘を肯定し、毛沢東思想にも共感を示すなど、連合赤軍に至る道筋が赤軍派全体のコンセンサスであったこともわかる。
50年前の遺跡に残されていた、現代では失われた観念のエッセンスが詰め込まれた瓶の蓋をあけてしまった気がした。