キンクスといえばレイとデイヴのデイヴィス兄弟を中心とする、ブリティッシュ・
ロックを代表するバンドで、60年代から活動をはじめ、数多くの名作を送り出して
います。
そのキンクスの数あるアルバムのなかでも、この『アーサー、もしくは大英帝国の
衰退ならびに滅亡』はその完成度の高さから彼らを代表するアルバムの一つとして
有名です。このアルバムはロック・オペラと評されることが多いのですが、一枚の
アルバムを通して物語を展開していったり、ホーンを多用したり転調のある楽曲の
多さなどからそうカテゴライズされているのでしょう。
キンクスの中心人物、レイ・デイヴィスは鋭い観察力と巧みな表現がずば抜けて
すごいのですが、このアルバムは彼の才能が十分に発揮された素晴らしいものに
なっています。幾つか私の好きな曲を解説させていただきます。
まずは1曲目の『Victoria(ヴィクトリア)』。オープニング・ナンバーにふさわしく
スピード感があり、サビも耳に残るメロディです。このアルバムを通して、ドラムは
重量感という感じではなく、軽く乾いたタッチで小気味よくリズムを刻んでいきます。
そのリズムに導かれてギターのメイン・メロディと、サビでのメロディアスな現れます。
中盤ではオペラ風の曲調が挟まれ、またもとのノリに戻るところなど印象的です。
2曲目の『Yes Sir, No Sir(イエス・サー・ノー・サー)』は一転して緩やかな
テンポで始まるのですが、この曲も中盤にオペラ風の展開が待っています。
続いての『Some Mother's Son(サム・マザーズ・サン)』はゆったりとした
バラードです。それほど派手な曲ではありませんが、もの悲しさをたたえたレイ・
デイヴィスのヴォーカルと、切ないメロディが心に残ります。歌詞は戦場で散って
いく息子を嘆き悲しむ母親について言及しています。また、後ろのコーラスや
ストリングスが絶妙の味付けをみせています。
5曲目の『Brainwashed(ブレイン・ウォッシュド)』はギターのリフからスタート
します。キンクスはあの名曲『You Really Got Me』を生み出したバンドで、あの
一度聴いたら忘れることの出来ない印象的なギター・リフを発明したバンドです。
ですからやっぱりかっこいいリフを持ってきますね。このスタートによって今まで
とは全く違った雰囲気になります。さらにサビのメロディがキンクスとしか言いようの
ないひねくれたものになっているのにも注目です。まだこういういわゆるブリティッシュ・
ロックの職人のメロディを聴いたことのないときは、こういうメロディが全く受け
入れられず、なんかぱっとしないなーなどと思っていたのですが、今は素晴らしいと
思うようになりました。なんど聴いても飽きず、なにかもう一度聴きたくなる、不思議な
魅力があります。以前レイ・デイヴィスがブラーのデーモン・アルバーンの作る曲を
褒めていたことがありましたが、確かに2人にはまさにイギリスというべき共通した
センスが感じられます。
7曲目の『Shangri La(シャングリ・ラ)』は静かなギターと呟くように歌う
ヴォーカルから始まり、次第にコーラスが被さって盛り上がっていく。中盤を過ぎると
曲調が一転し、ドラムの手数が一気に増えリズムも加速していく。かと思うとまた再び
ゆったりとしたスピードになりオーケストラ的ホーンも入りスケールが大きく盛り
上がっていく。非常にダイナミックな展開で、この曲にはいつもドキドキさせられます。
9曲目の『Mr. Churchill Says(ミスター・チャーチル・セッズ)』はゆったりした
曲調から一気に盛り上がる展開が素晴らしいです。しかもコメディ的な要素をふんだんに
盛り込んでの盛り上がり方は牧歌的であり、下世話であり、大衆的であり、これぞ古き
良き英国といった感じで大好きな曲です。
歴史的名盤という評判を裏切ることのない素晴らしいないようだと思います。
こういったアルバムは一聴すると、地味というイメージを持たれるかもしれませんが、
何度も聴き込んでみると新しい発見を何度もでき、いつの間にか宝物になっている
ということがよくあります。キンクスのひねくれたブリティッシュ・ロックの世界へ
あなたも!
アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡+10
仕様 | 価格 | 新品 | 中古品 |
CD, 1998/8/26
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥1,080 |
CD, 2010/11/24
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥1,380 |
CD, 2004/11/24
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥1,697 |
CD, 2009/3/4
"もう一度試してください。" | 1枚組 |
—
| — | ¥2,635 |
CD, 限定版, 2011/11/23
"もう一度試してください。" | 限定版 | — | ¥10,200 |
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曲目リスト
1 | ヴィクトリア |
2 | イエス・サー、ノー・サー |
3 | サム・マザーズ・サン |
4 | ドライヴィン |
5 | ブレインウォッシュド |
6 | オーストラリア |
7 | シャングリ・ラ |
8 | ミスター・チャーチル・セッズ |
9 | マリーナ王女の帽子のような |
10 | 若くて純真な時代 |
11 | ナッシング・トゥ・セイ |
12 | アーサー |
13 | プラスティック・マン (MONO) (ボーナス・トラック) |
14 | キング・コング (MONO) (ボーナス・トラック) |
15 | ドライヴィン (MONO) (ボーナス・トラック) |
16 | 母の腕の中に (MONO) (ボーナス・トラック) |
17 | ディス・マン (MONO) (ボーナス・トラック) |
18 | プラスティック・マン (未発表ステレオ・ミックス) (ボーナス・トラック) |
19 | 母の腕の中に (未発表ステレオ・ミックス) (ボーナス・トラック) |
20 | ディス・マン (未発表ステレオ・ミックス) (ボーナス・トラック) |
21 | マリーナ王女の帽子のような (未発表モノ・テイク) (ボーナス・トラック) |
22 | ミスター・シューメーカーの娘 (未発表曲) (ボーナス・トラック) |
登録情報
- 梱包サイズ : 14.09 x 12.63 x 1.37 cm; 80.32 g
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- EAN : 4988005542076
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- レーベル : USMジャパン
- ASIN : B001PBQKW0
- ディスク枚数 : 1
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年4月22日に日本でレビュー済み
2011年1月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルがやたらと長いし、ジャケットもダサいので、長らく敬遠していたが、聴いてみたらこれがめちゃくちゃいい!曲はロックっぽい勢いがあって粒ぞろいだし、アルバム全体でドラマティックな展開があり、盛り上がる。内容は、労働者階級に生まれた自分たちのルーツを、英国の歴史を紐解きながら掘り起こしているという点で、このバンドらしく内向き。そういうところが通好み且つワールドワイドなポピュラリティーを得られない要因なのかもしれないが、いいものはいいのだ!ロック好きの若い人にぜひ聴いてもらいたい!
2007年5月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
SEをふんだんに取り入れて驚異のコンセプトアルバムを作ろうと、やっきになるも失敗した『フェイス・トゥ・フェイス』の後、所謂『サムシングエルス』あたりから、レイ・デイヴィスは、「本来オレ達は売れるバンドじゃないはずだろう」と開き直った感が強い。確かにキンクスは歌詞は世知辛いし、レイ・デイヴィスは前歯が不自由だし、売れてしかるバンドではなかったのだ。ところが『ユー・リアリー・ガット・ミー』のヒットから、作曲者としての才気に周囲が驚嘆し、イギリス・ビート・バンドでリスペクトされたりしちゃったもんだから、本人の意思とは別にどんどん大きな存在になっていった。しかしプロデューサーとしての権限まで手に入れた『サムシング・エルス』あたりから。冒頭のように「オレ達が売れちゃおかしい」と変人らしい結論に達したのだ。それからはやりっぱなしのコンセプトアルバムの洪水のようにシングルカットしにくいアルバムを量産していき、「ヒヒヒ、どうだ買う気がおきねえだろう」とレイ・デイヴィスは一人満悦していたはずだが、元々才気が走っている人だから、こんなとんでもない名作を作ってしまうのだ。とはいえこんな名作を作っちゃうもんだから、「やっぱロックはコンセプトアルバムよ」などとわけが分からない変人らしい意欲に燃えちゃって、やがては『ソープオペラ』のように、ちょいともういい加減にしてよになていっちゃうのだから、偏屈な人間は天才とは違った難解さを持っているもんだ。
2003年11月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
歌詞カードに目を通すまで、ずっと、「アーサー」なる人物は英国伝説に登場するアーサー王のことかと思っていました。実際はただの平凡なる一英国市民の名前だったのでした。そんなキャラをロックオペラ&コンセプトアルバムの主人公にし、その平凡な人生を諦念のまなざしで冷めつつも温かく見つめているところが、いかにもレイらしいです。そんななかで「若くて純真な時代」という美しい楽曲には、多くの人がセンチなるのではないでしょうか。アーサーに限らず、どんな人だって、年齢を重ねていくものだから。
2010年3月6日に日本でレビュー済み
構想は
ロック・オペラ“トミー”
に先立っていたものの、しかし、ロック・オペラ『トミー』の発表直後であったため、そして『トミー』のほか、
ジギー・スターダスト(紙ジャケット仕様)
、
ザ・ウォール
とも比べて、ロック音楽や歌詞の物語にロック少年が喜びそうなむだな孤独感、自意識、苦悩、浄化がないため、この作品に対する評価は低いようです。
しかし、 マスウェル・ヒルビリーズ(K2HD/紙ジャケット仕様) と同様に、UKの労働者階級の視点で、没落していく大英帝国の現実を過不足なく描写した傑作だ、と思います。
輸入盤にも歌詞はついています。日本盤だと訳詞があるので、便利です。
ボーナス・トラックも十分ついているのですが、でも、2010年には、 アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡 デラックス・エディション(紙ジャケット仕様) も予定されているので、注意が必要です。
しかし、 マスウェル・ヒルビリーズ(K2HD/紙ジャケット仕様) と同様に、UKの労働者階級の視点で、没落していく大英帝国の現実を過不足なく描写した傑作だ、と思います。
輸入盤にも歌詞はついています。日本盤だと訳詞があるので、便利です。
ボーナス・トラックも十分ついているのですが、でも、2010年には、 アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡 デラックス・エディション(紙ジャケット仕様) も予定されているので、注意が必要です。
2011年7月4日に日本でレビュー済み
ロックオペラというジャンルはフーのトミーあたりから聞くようになったと記憶しているが、要はある一種の物語を1枚(ないしは2枚)のレコードで聞かせるという趣向である。キンクスは結果としてその後ロックオペラのレコードを僕には覚えきれなくらい量産することになるが、どちらかといえばボードヴィル調であったり、ロックという感じを最も表しているのはこの作品だと思う。これは本来はレコードで所有するべきもので作品自体がレコードとジャケットと中の袋とが一体となって実に楽しいものであった。
2011年1月1日に日本でレビュー済み
キンクスは、LPの時代に数枚聴き、個々の名曲で好きな曲はあったが、作品を通して、気にいったものがなく、同じ英国のザ・フー、ジェネシス、ロキシー、ボウイ、VDGGの様に、作品を聴き漁るという事はなかった。この作品をCDで改めて聴いたが、これは凄い。曲も演奏も明らかに最高作ではないか!!名盤として文句無しで、ロック作品としても、すべての作品の中でも高い位置にある。例えば、ザ・フーの「トミー」に、匹敵するだけでなく、ソング・ライティングだけみれば、こちらのほうが上だ。元々テレビドラマのためのサントラなので、テーマがやや希薄で地味な印象を与え、一般には受けず、ヒットしなかったのだろう。純粋に作品として優れており、最初にこの作品を聞いていたら、キンクスをもっと聴き漁っていたのは、間違いない。この作品についての、ポール・マッカートニーやピーター・ガブリエルのコメントを聞きたい。演奏はシンプルだが今聴いても壷を得ていて素晴らしい。ブラスの使い方もエクセレントだ!凄すぎる作品!!
2005年5月26日に日本でレビュー済み
初期KINKSの最高傑作と呼ばれているアルバムです。
コンセプトアルバムで、はじめから終わりまでアルバムを通して聞けます。
このアルバムにはおまけの曲もついているのですが、お買い得ではあるものの
一応アルバムとしてはおまけはおまけとして聞くのが理想ではないかと思います。
最高傑作といわれるだけあり、KINKS節が全開です。
歌詞も皮肉っぽくてKINKSらしいです。
曲調はほのぼのとして楽しめます。個人的に”VICTORIA"とかが大好きです。
あまりライブで歌われる曲はこの中ではないですが、シングルで一曲一曲を楽しむアルバムではなく
アルバム全体を楽しむためのアルバムではないかと思います。
コンセプトアルバムで、はじめから終わりまでアルバムを通して聞けます。
このアルバムにはおまけの曲もついているのですが、お買い得ではあるものの
一応アルバムとしてはおまけはおまけとして聞くのが理想ではないかと思います。
最高傑作といわれるだけあり、KINKS節が全開です。
歌詞も皮肉っぽくてKINKSらしいです。
曲調はほのぼのとして楽しめます。個人的に”VICTORIA"とかが大好きです。
あまりライブで歌われる曲はこの中ではないですが、シングルで一曲一曲を楽しむアルバムではなく
アルバム全体を楽しむためのアルバムではないかと思います。