舞台演出はなかなかに素晴らしい。
出演者の歌唱もなかなかハイレベルであり演奏も熱演している。
ただ、惜しいのはジークフリート役が小柄で英雄としては役不足。
それにブリュンヒルデ役が女性的魅力に欠けることだ。
しかし、ハーゲン役のクルト・リドゥルの演技と歌唱は抜群に素晴らしい。
おそらく歴代ハーゲンの役ではダントツのナンバー・ワンではないだろうか。
彼ならばプロレスの悪役も務まる。
彼が歌い始めると舞台の空気が悪の世界に変貌する。
兵士たちの合唱がこれに加わればまさしく狂気を含んだワーグナーの音楽世界だ。
彼の演技を観るだけでもこのDVDを購入する価値がある。
演出は奇をてらったものではなく、オーソドックスでありながらも新しさを感じさせてくれる。
さして広くない舞台であるが、かなり計算されて巧く作り上げられている。
以上の理由からワーグナー・ファンならば持っていてよい作品だと思う。