たまたま聴いた#5「Swans」に魅了され、Camera Obscuraにハマりました。
その魅力はなんと言ってもボーカルのトレーシーアン・キャンベルの鼻にかかったような甘い声と、彼女が生み出すキュンキュンするような切ないメロディ。ギターポップ(インディーポップ)やドリームポップに分類されるジャンルだと思いますが、ネオアコやフォークが好きな人にも訴えかけるものがあると思います。
これまで「Desire Lines」まで5枚のアルバムが発表されていますが、なぜか4枚目である本作のみがMP3ダウンロードもなければ某大手ネットレンタルでも利用できません。つまり(YouTubeのような非公式なものを除いて)本作を聴く方法はCD購入のみです。そのせいか、今のところレビューもおそらく唯一付いていません。「Swans」をどうしても聴きたくて輸入品を購入しました。
本作の目玉であり比較的人気の高い#1「French Navy」を始めとする序盤の曲で個人的にあまり響くものがなく、やっぱり取扱いが無いだけあってハズレだったかなと思ったのも束の間。本作を手にするきっかけとなった「Swans」以降、後半で名曲・佳曲が押し寄せます。バラード#7「Careless Love」は、イントロはちょっと歌謡曲臭いものの歌が始まるとしっとりと耳に心地よく、1番2番が終わったあとの大サビ(サビ?)は流麗なメロディで盛り上がります。表題曲の#8「My Maudlin Career」はグラデーションのように音階が上がるピアノリフが裏で美しくループし続けるミッドナンバー。そしてラストにはCameraの中でも上位に入ると言っていい名曲「Honey In The Sun」が爽やかに疾走します。サビの盛り上げ方、曲の終盤へと向かう盛り上げ方が素晴らしく、アルバムを見事に締めくくっています。
Cameraのアルバムはすべて聴きましたが、トレーシーアンの声で言うと、1stや2ndはまだ声が細く、曲もオシャレなカフェのBGMという雰囲気が拭えません。逆に5thまで行くと全体的な曲調が成熟しすぎている感があります。その点で、この4thは大人っぽさとあどけなさが共存する歌声と成熟したメロディで、最も歌ものとして聴き応えがあるのではないかと思います。本バンドに興味のある人は、是非CDで聴かれることをオススメします!