メンバーの相次ぐ死や、結婚生活の破綻といったネガティブな周辺状況の中、結束を固めるかのようにドニー・ヴィーがチップ・ズナフとのコンビを復活させた本作、久々の来日も控え、ファンにとっては嬉しい登場だ。
ジャケに写っているギタリストとドラマーは不参加。レコーディングのみに別のミュージシャンが参加している。特にギターは、あのジェイク・E・リーというので聴く前に身構えたが、正直、知らずに聴いても分からないと思う。ヘヴィメタっぽいソロなど出てこず、曲を生かしきるスタンスに徹しているのでご安心を。
楽曲は、40歳台である現在の彼らの心境を表したのか、疾走感やメジャーな明るさは抑え目で、マイナーキーを使い、ミディアムなリズムのなかで彼ららしさを出そうとしているように感じた。従って派手さはないが、聴きこむほどに味わいは出る。ドニーの歌声自体にもともと宿っていた湿り気のようなものが、程よくサウンドに溶け合っている作品だ。