息子の高校世界史の学習書には学習に役立つ映画を取り上げたコラムがあったことから、
史実を基にした映画は観るように課している。
また、夫の仕事の担当が、北米、欧州、中国、アセアン加えて、
故フィデル・カストロFidel Alejandro Castro Ruz前議長の当時の亡命先
メキシコにも一拠点あることから
中南米理解の一端のため購入。
キューバ革命Revolución cubanaについて、教科書では紙幅のため
世界史Aでは6行及び世界史Bでは5行の割り当てしか出来ず、
なぜ親米政権を倒す動きが起きたかや国情についての考察は難しく、
内容理解や把握にはこのような映画を観るなどは必須であると痛感。
メディアによるニュースや特集では得られない導入がなされるため、背景や革命後の展開まで、
当然ながら国際情勢理解に大変役に立つ、有意義な時間を与えてくれる作品。
最も感銘を受けた「チェ28歳の革命」チャプター13<“祖国か死か”>、
1964年12月11日国連総会でキューバ主席として演説、
7月26日運動の合言葉『祖国か、死か!Patria o Muerte』で締めくくる。
7月26日運動Movimiento 26 de Julio; M-26-7とは、カストロが率いた
フルヘンシオ・バティスタFulgencio Batista y Zaldivar政権転覆を遂行した革命運動組織で、
1953年7月26日モンカダ兵営襲撃の日付が名称の由来。
襲撃が鎮圧された後、カストロはメキシコへ亡命し82名で再結成。
この映画の冒頭2と結末のシーンにある、
グランマGranma号で1956年11月25日出航、12月2日キューバ再上陸。
キューバ空軍に攻撃される等82名中12名のみが生き残った。
その後も政府軍に比し少数にも関わらずゲリラ戦を継続、
約2年後の1959年1月1日にバティスタの国外逃亡及び革命組織のサンタクララSanta Clara占領、
1月8日カストロのハバナLa Habana入りにて革命成功。
当時、アメリカの企業とその関連会社がキューバの農地の7割以上を所有していた状態を、
今回の映画鑑賞でキューバ革命に関心を持ったことにより識り得て、
次の記述に得心した次第である。
“アメリカが「裏庭」と見なした中南米に社会主義国が出現した衝撃は大きく、
アメリカはキューバへの対決姿勢を強めた。”(教科書より抜粋)
また、当時の低い識字率のシーンがあったが、
現在、キューバ国民は教育と医療は無料で受けられる国策により、
世界トップクラスの識字率と、
“1959年の革命以降,予防医療に積極的に取り組み,
母子保健や高齢者事業およびワクチン接種による疾病予防を徹底し、
乳幼児死亡率4.3と平均寿命78.45歳”(外務省HPより抜粋)、
平均寿命はアメリカに次ぐ快挙となっている。
チェ・ゲバラErnesto Guevara de la Sernaの国連演説を、実際の映像も動画で視聴。
貴族階級の末裔で医師であり、平素は本来あまり激することが少ない理性的な、
感情の統制が出来る人が、殺傷力ある銃を持ち武力闘争にて改革を断行していったのである。
しかも、フィデル・カストロは弁護士でもあった。
その当時の国情をこれほど切実に感じた映像はなかった。
演説は、最初、当然非常に理知的な口調から始まり、
最後、「祖国か死か」のくだりに熱血漢がうかがえ、
冷静な情熱で以て成し得ていったのだと、私は感じるに及んだ。
腕の骨折の応急処置に、令室アレイダ・マルチAleida Guevara March氏が手渡した
象徴的な黒のスカーフ。彼女はサンタクララSanta Clara生まれの女性。
プロデューサーも務めた主演男優ベニチオ・デル・トロBenicio del Toroの渾身の演技。
正に情熱、演技だと感じさせないほどであり、実際の映像を挿入した本人か
俳優か判別がつかなくなる錯覚までおこした。
2本続けて視聴し、長時間に渉る作品にかかわらず、最終章に近付くにつれ、
食傷ではなく情熱を感じていった。
鑑賞後、受けた感銘はゲバラの骨格であり、
俳優デル・トロは観る側(の私)に硬骨漢ゲバラの気骨を遺したのだと
思惟するに至った。
そして、この気骨は規律と高いモラルから組成されている感がする。
「チェ39歳別れの手紙」チャプター19<1967年10月9日>:
ゲバラが銃殺刑に処されるシーンは、大変良識ある描写となっており、尊厳を守る優れた見識。
“私たちを囲んでいる世界に立ち向かうべく
その手助けとなるような物語を作りたいのです。”
(Disc3に収載、スティーブン・ソダーバーグSteven Soderbergh監督の言葉)
そして、この映画作品の監督がアメリカ人であることも意義深いと思う。
予め基礎情報や史実を確認、鑑賞後に復習をしてから再度鑑賞、
キューバ革命前史からM26のゲリラ戦争、革命成功後の国連総会の様子、
ボリビアでの銃殺刑までの輪郭が明らかになり、
国営化改革の成果とその意義を知り得た。この商品は範となる良品である。
この作品の史実に於いて落命された方々のご冥福を祈ります。
故チェ・ゲバラErnesto Guevara de la Serna氏の生誕の日に。