ジャズを聴くようになって10年くらい経っていただろうか。この前年頃まで『富樫雅彦』は、Untouchableだった。プロフィールと言おうか逸話的な情報は得ていたが、とてもとても作品に手にする勇気などなかった。リーフの世界は危なかった、怖かった。でも、怖いもの見たさの・・・・。
それが、少しばかり扉を開けかけたこれも危険な世界『山下洋輔』との共演。反目し合ってるって読んだゾ。一緒にヤルなんてありえねーって書いてあったゾ。しかもDUO !! だ。おっかねー。でも、児山紀芳さんがプロデュースした作品(Next Wave第一作目)だからという何だか意味不明な拠り所だけで、購入。
かけた。Actionが始まった。何というスピードだ。真剣を振りかざしての対峙だ。どこまでもクリアーに鋭利そのものの音だった。混沌だ!ドロドロだ!なんて微塵もない。リーフへの偏見じみた概念は、吹っ飛んだ。呼吸を整え、相手を見つめ自身に問うた後に、あのNostalgia。戦慄だ。もー緊張で体が硬くなっていた。この曲は、以後二人だけの演奏曲目となった。二人は、このスリリングな邂逅を、心から味わっているかのように音を紡いでいった。
私は、この作品を聴き直して思った。山下洋輔は、何とセンシティヴで思いやりのあるピアニストなのだと。そして、富樫のperは引き算の、そぎ落としの美だと。
最後に、Next Waveは貴重な作品を残している。梅津和時のBamboo Village、富樫の兆・兆- Kizashi Live、松本英彦のThe Session・The Blues、宮沢昭のMy Piccolo、山本邦山David Friesen佐藤允彦のHOZAN,FRIESEN+1、など。いずれも高録音でジャケットも優れていた。しかし、短命に終わったと記憶する。