70年代終盤から80年代序盤にかけて大きな輝きを放ったファンク/ソウル・グループ、Mtume(エムトゥーメイ)。リーダーのJames MtumeとReggie Lucasは、ともにマイルス・デイヴィスのバンドで演奏する等、卓越した技能と豊富な経験の持ち主で、二人三脚でグループを牽引したほか、ステファニー・ミルズ、フィリス・ハイマンなど多くのアーティストのヒット曲を手がけました。ただ、「両雄並び立たず」だったのでしょうか。蜜月は長くは続かず、彼らはやがて袂を分かちます。その分岐点とも言われているのが、このSunfireの唯一のアルバム。Reggie Lucasが自ら率いたファンク・グループです。
たった1枚のアルバムしか残せませんでしたが、その作品は40年の歳月を経てなお瑞々しい輝きを放っています。
冒頭の「Shake Your Body」は、スペイシーで上昇感のあるエレクトリック・ファンクで、そこそこ良い曲って感じなんですが、注目は次の「Step In The Light」。ホーンやチョッパー・ベースを多用したフュージョン寄りのファンクながら、よく聴くとストリングスも鳴っていてメロディアスなサウンドに。アクセントをつけてしなやかにスウィングしていく感じも絶妙で、ここにRowland Smithの伸びやかで力強いヴォーカルが加わります。天まで上り詰めて行くような爽快感。これは最高です。
「Keep Rockin' My Love」は、キャッチ-でドラマティックな展開がゴキゲンなファンク。連打するようなシンセ音とスミスのパンチ力のあるヴォーカルでたたみかけ、サビではグッとドラマティックに。
良いファンク・バンドは、ファンクだけでなくバラードも良いという定説どおり、このアルバムもバラードが充実しています。
「Givin' Away My Heart」は、ウェストコーストのシンガーが歌いそうな甘酸っぱく爽やかなナンバー。ディープでワイルドなスミスも歌声もここでは爽やかでピュアです。「Millionaire」は、いかにもソウルらしいバラード。穏やかでしっとりとしたメロディー。「たとえ大金があったとしても君の愛がなければ」とひたむきに歌い上げるナンバーで、サビの包容力のあるコーラスが胸に染みます。
そして、復刻された本作を聴く上で重要なことは、オリジナルには収録されていない「Never Too Late For Your Lovin'」(83年に12インチ・シングルでリリース)。深夜を想起させるクールな打ち込みサウンドで淡々と進行しつつ、一転、幻想的でスリリングなサビへと展開するアップテンポです。しなやかで、
この上なくカッコ良いナンバーで、もしSunfireに2枚目のアルバムが出ていたら、こんな曲であふれていたのでは、とワクワクさせられます。
Reggie Lucasは、その後、マドンナのデビュー・アルバムにも曲を書き、ランディ・クロフォードやリビー・ジャクソンのアルバムをプロデュースする等、ヒット・メイカーとしての地位を確立。一方のJames Mtumeも、自身のグループで最高ヒットを記録する『Juicy Fruits』をリリースし、それぞれの道を進んで行きます。
時代を超えて、輝きを放つ1枚として、お薦めのアルバムです。